中学受験で「コスパ」を連呼する親に欠ける視点、子を塾漬けにしない意識とは
中学受験勉強は子どもたちからたくさんの「時間」を奪う
5月も下旬に差し掛かった。小学校に通学するわが子も、進級後ようやく生活が落ち着いてきたころかもしれない。さて、この初夏の時期、わが子に中学受験を挑ませるか否かを悩んでいる保護者、あるいは、中学受験を志し、わが子が連日のように塾通いをしている場合、志望校・受験校について具体的に考え始めた保護者もいるだろう。中学受験専門塾スタジオキャンパス代表の矢野耕平氏は、両者に共通した注意しなければならない中学受験に対するスタンスがあるという。 【図表で見る】中学受験における「挑戦校」「実力相応校」「安全校」の基準 地方に比べれば児童数の大幅な減少が抑えられていた首都圏だが、これから先は年々減っていくと予測されている。しかしながら、首都圏の中学受験は依然として活況を呈し、今春(2024年度)の中学入試ではかなりの激戦が繰り広げられた。首都圏の児童数は減少している一方で、中学受験率は上昇しているという。子どもの数が少なくなければなるほど、子どもたちひとりひとりに手厚い教育を授けたいと望む保護者が増えているのだろう。あるいは「1人っ子」のご家庭では、良い教育環境を整えるためには出費を惜しまない保護者も多いのかもしれない。 あくまで中学入試の実質倍率動向からの予測にすぎないが、首都圏の中学入試で第1志望校に合格できるのは、男子で「約4人に1人」、女子で「約3人に1人」とされる。第1志望校合格のかなわない子のほうが圧倒的に多くを占めるという実に厳しい世界だ。 そのため、中学受験に臨む子どもたちの大半は、中学受験を専門に指導する進学塾に通い、何年もかけて学習に打ち込む。入試で出題される主要教科のどれもが、大人が取り組んでも難解に感じられる問題だ。早期のうちにこれらの基盤を構築することは、その後の学びに好影響を及ぼすことが多いし、何より「ゴールデンエイジ」と形容されるほど知識の吸収力に優れた小学生時代に中学受験勉強に励むことは、大きな意義があると考えている。 一方で特に5年生・6年生の2年間は、「塾通い」が生活のメインになる。何かに一意専心することは、何かを捨てなければならないことの裏返し。友人と遊びに出かけたり、習い事に打ち込んだり、趣味やスポーツに没頭したりという時間が奪われてしまうのはたしかだ。