東海道新幹線50年「技術編」 未知の新技術は使われなかった「0系」開発
頭を悩ませたトンネル通過問題
さらに、時速200キロメートルという未知のスピードで走る新幹線は、これまでには考えられなかった問題が起こることから技術者たちを悩ませました。 そのひとつが、トンネル通過時に起きる「トンネルドン」です。「トンネルドン」は、新幹線がトンネルを走る際に生じる微気圧波を原因とした騒音のことです。列車がトンネルを高速で通過すると、圧縮された空気によって騒音と振動が発生するのです。 沿線住民にとって振動や騒音は、生活に支障をきたす公害です。これらを軽減する対策は、新幹線を運行するにあたって至上命題でした。 新幹線がクリアしなければならない問題は、車外だけではありません。車内でもトンネル通過時は気圧が変化することから、乗客に不快感を与える「耳ツン」と呼ばれる現象が起きます。快適に乗車してもらうのに、0系はトンネル通過時に排気口を完全に密閉するシステムを導入しています。
私鉄からも積極的に技術を取り入れる
そして、時速200キロメートルを実現するために、もっとも欠かせなかったのが自動列車制御装置(ATC)でした。ATCとは、列車の速度をコンピューターが自動的に制御するシステムをいいます。高速で走る新幹線は、運転士が信号を確認してから操作をしていては間に合いません。そうしたことから、新幹線ではいち早くATCの導入が決まったのです。 ちなみに、ATCを最初に導入したのは1961年開業の営団地下鉄(当時)日比谷線です。0系が導入したことによって、ATCは国内の列車運行に不可欠な装置になりつつあります。 「0系は私鉄からも積極的に技術を取り入れています。つまり、日本の鉄道業界の集大成とも言える車両なのです」(近藤さん) 小田急電鉄の3000形ロマンスカーは、開発にあたって新幹線技術者たちが協力しています。0系に導入された車両技術が、ほかの鉄道会社の車両にも活かされたのです。 0系は、合計3216両が製造されました。これは新幹線全車両のなかでも最多製造記録です。そうした数字も、0系が性能的に優れていたことを証明していたと言えるでしょう。 (小川裕夫=ライター)