大谷翔平は大物2人の心を動かした…真摯な野球への姿勢に「彼をサポートしていくだけだ」「想像していた以上の選手だった」
ドジャースの大谷翔平選手が新天地で初めてのレギュラーシーズンを終えた。右肘手術の影響で、打者一本に専念したシーズンで、打率3割1分、54本塁打、130打点、59盗塁と驚異的な成績をマークした。圧倒的な輝きは時に孤立を生む場合もあるが、スター軍団のドジャースにあって、大谷の存在はシーズンが深まるごとにチームメートの尊敬を集めていった。 ◆大谷翔平、真美子夫人&デコピンとの超“どアップ”ショット公開【写真複数】 「1番・ベッツ、2番・大谷」。ドジャースの看板打線はこの並びでスタートした。だが、ムーキー・ベッツ外野手が6月中旬に左手に死球を受けて約2カ月離脱。6月17日から始まった「1番・大谷」は打ちまくった。 結果的に首脳陣はベッツ復帰後も、「1番・大谷」継続を決めた。しかし、ベッツはキャリアの大半を1番で過ごし、この打順に愛着があった。復帰直前、自身が2番に入ることに少しだけいら立ちを見せた。「自分が翔平よりすごい打者とは言えない。翔平が言えば、何でも通る」。この談話の後、ロバーツ監督は「翔平は何番がいいとか、言っていない」と火消し。ベッツも2番を受け入れた。 首脳陣の見立ては当たった。「1番・大谷、2番・ベッツ」の新布陣は相手チームに大きな脅威を与えた。ベッツも、大谷の後ろで輝きを放った。勝負所で大谷が2度申告敬遠された時、ベッツは3ランと決勝打を打って結果を出した。 その2人が、シーズンのピンチを救った。負ければ、パドレスに2ゲーム差に詰められていた9月23日のロッキーズ戦の土壇場9回。大谷が値千金の同点ソロを放った後、ベッツがサヨナラ弾で試合を決めた。 ベッツは「翔平がエネルギーをもたらした。彼がチームを引っ張っているのは明らか。最近、始まったことではない。だから、彼は7億ドルの大金を手にするんだ。僕らはただ、彼をサポートしていくだけだ」。ネクストバッターズサークルで見てきた「背番号17」へすごみを感じたベッツの敬意が言葉ににじんだ。そこには、1番・大谷のわだかまりはなかった。 大谷がマイアミで「50―50」を達成した翌日、ドジャー・スタジアムでは5万人のファンが待っていた。1回、打席に入ると、ファンは総立ち。さらにドジャースの監督や選手もベンチの前に出て、拍手に加わった。 ロバーツ監督が明かした。「クレイトンが前に出ようと言ったんだ」。ドジャースの「レジェンド」メジャー通算212勝のクレイトン・カーショー投手の発案だった。 カーショーといえば、言わずとしれた、生え抜き17年目の精神的支柱。その左腕が行動を起こした。それは記録よりも、むしろ、大谷の真摯(しんし)な野球への姿勢に心を打たれたからだろう。 カーショーはシーズン中から「来季投げるためのリハビリをしながら、毎晩のように特別なことをやってくれる。それはとても驚くべきことだ」と話していた。大谷の勝利の姿勢は、自らが貫いてきた信念と同じだった。 「彼が勝利にどれほどこだわっているかは明らか。特にビッグゲームでのエネルギーはすごい。彼は本当に勝利を望んでいて、ポストシーズンに行くことに興奮している。間違いなく、チームに活力を与えている」。カーショーはこれまでもチームに行ってくれと言われれば、中3日でも構わず左腕を振った。勝利に対して、どこまでも貪欲だった。番記者の一人は「プロフェッショナルの塊」と評す。そんなドジャースの顔は大谷について、シーズン終盤にこう語った。「自分が想像していた以上の選手だった」。(写真はAP)
中日スポーツ