「これまで『ダサい』といわれたから“センスのいい人”に見られたら」茨城とソウルのアクセントは同じ“無型”だった
放送批評懇談会が日本の放送文化の質的な向上を願って、優秀番組や個人、団体を顕彰するために、1963年に創設した「ギャラクシー賞」。2023年度「ラジオ部門」で大賞を受賞したのが、「SBSラジオギャラリー 方言アクセントエンターテインメント~なまってんのは、東京の方かもしんねーんだからな~」 【写真を見る】「これまで『ダサい』といわれたから“センスのいい人”に見られたら」茨城とソウルのアクセントは同じ“無型”だった この番組では、日本語のアクセントに注目し、「静岡県内の一部や栃木県などの人が話すアクセントのない言葉こそが、もともとの日本語で、いま標準語とされる東京の言葉の方がなまったものかもしれない」という説をさまざまな例を挙げながら考察していった。今回、番組内容を再構成し、記事化した。 茨城弁や栃木弁が代表格で、手品師のマギー司郎さん(茨城県出身)や人気漫才コンビ・U字工事の2人(ともに栃木県出身)の話しぶりを思い浮かべると分かりやすい。この言葉の調子は、すべての単語にアクセントの決まりがない「無型アクセント」によって、もたらされている。 この「無型アクセント」は外国語にも存在する。韓国では、標準語とされるソウルの言葉が「無型アクセント」だ。常葉大学の文載皓准教授(経営学)は、アクセントのある韓国南西部・光州で育ち、大学でソウルへ進んだ。「地方出身者だとは分からないようにしゃべれたが、親に電話をしているところを後輩に聞かれ、方言を指摘されたこともある」(文准教授) ■上京したら“無型アクセント”に!? 韓国では、標準語の位置づけが日本よりも厳格だ。方言で話していると、教育レベルの低い人とみられてしまうこともあるという。だから、上京してソウルに住む人は、「無型アクセント」がもたらす平坦な感じの話し方を真似して習得する。アクセントのないソウルの言葉の方が、地方の言葉に比べ、やさしい感じがするとか、都会的だと思われている。 日本に置き換えて考えると、福岡や大阪、静岡の出身の人が上京したら、茨城弁みたいな「無型アクセント」の話し方を覚えようとするというようなことだ。話す言葉が都会的かどうかは、アクセントのある、なしでは決まらない。その国の経済や文化の中心となった地域で、たまたま話されていた言葉が都会的な印象を持たれるにすぎない。