中越典子さん(44)“朝ドラヒロイン”としてスタートした女優人生「でも、肩書きに実力が追いつかず劣等感がありました」|STORY
10年以上劣等感に苛まれ“朝ドラヒロイン”の肩書きが辛かったことも
朝ドラの主演女優として、華々しいスタートを切ったかのように思われることも多いのですが、実は朝ドラを卒業してからが苦労の始まりでした。「こころ」が初めて挑戦した本格的なお芝居だったので、現場ではまるでお人形のように、「目線を上げて、そこで喋って」と監督の説明通りに演技をしていたんです。 とにかく膨大な話数の撮影でしたから、監督と1つひとつのセリフについて丁寧に意見を交わす時間の余裕もない。台本を読み込んで内面の解釈を深めたり、リハーサルで監督と話し合いながらお芝居を作り込むのがセオリーだけど、当時の私にはそんな技量も、認識すらありませんでした。 とりあえず言われた通りにこなしてOKをもらい、違っていたら指摘されたところを直して…と対処療法的にお芝居をしていたので、演技の本質までは理解できていなかった。そんな私が朝ドラを卒業して大海原に出たら、いきなり自由度の高いフリースタイルのお芝居を求められるわけです。ドラマの現場に入っても全く動けない…。 どうすれば良いかわからず、当時は演じるのがすごく怖かったですね。特に私の場合は「朝ドラの主演女優」としての肩書きもあってドラマに呼んでもらったのに、その期待に応えられないことが心から悔しくて恥ずかしかった。正直、周りからも「朝ドラヒロイン」という目で見られるのが精神的に辛かった時期もありました。 同世代の役者さんと一緒に演技をして、「やっぱり上手だな~」と肌で感じる人もいましたし、監督に「中越の演技はつまんねえなあ!」と吐き捨てられたことも。そんなこと言われたら誰でも落ち込みますよね!?(笑)。今思えば劣等感の塊で、10年くらいはずっと辛かったです。でもきっとここまで続けてこられたのは、そんなマイナスな感情や悔しさがあったから。劣等感をバネにしたことで、努力し続けてこられたと思います。そういう意味でも、自分を強くしてくれた「こころ」の経験には感謝していますね。