映画ファン必見!発掘・復元されたイタリア映画などを楽しむ「蘇ったフィルムたち チネマ・リトロバート映画祭」
国立映画アーカイブ(東京都中央区)で開催中の「蘇ったフィルムたち チネマ・リトロバート映画祭」で1月14日、イタリア全土の美しい風景、失われつつある伝統や労働の様子をとらえた貴重なフィルムが上映された。 この日、まず上映されたのが「グランド・ツアー イタリア紀行・短編集」。1908年から12年にかけてイタリア全土で撮影され、同国のチネテカ・ディ・ボローニャ財団(FCB)が所蔵する映像で構成した特別プログラムだ。 上映前に行われた解説でFCBディレクターのジャン・ルカ・ファリネッリさんは「映画スター」というものが誕生する以前、イタリアには「ローマ、フィレンツェ、ベネチアといった非常に有名な都市があり、それらが「スターだった」と語った。 映画の歴史は、1895年、フランス人リュミエール兄弟のシネマトスコープにさかのぼる。初期の撮影は、美しい風景を対象としたものが多かった。ファリネッリさんは、「グランド・ツアー イタリア紀行・短編集」上映中も解説を続け、草創期の映画の状況をわかりやすく説明した。 プログラムは「イタリアへの旅 美しいイタリア 観光の誕生」「イタリアでの仕事」「出来事・悲劇」「街」「到着!」の5部から構成され、古き良き時代の街並み、働く人々の様子などを生き生きと映し出していた。
14日は続いて「ヴィットリオ・デ・セータ作品集」が上映された。工業化によって失われつつある南イタリアの伝統や労働をラジカルな手法でとらえたヴィットリオ・デ・セータ(1923年~2011年)による1954年~59年のドキュメンタリー作品10編だ。 大胆な構図やリズミカルな編集によってとらえられた漁場、鉱山などでの労働の映像が、現地で録音されたダイナミックな音声とともに観客の眼前に広がり、圧倒される。「メカジキの時機」は、シチリア島近海でメカジキ漁を行う漁民たちの迫力たっぷりの様子がスクリーンに展開する。上映後は、ファリネッリさんが、デ・セータ監督自身の協力も得て行った修復作業の思い出、映像が持つ価値などについて語った。