【選手権】「みんな笑おう」失点からの勝ち越しゴールに見る新生・帝京の成長
第103回全国高校サッカー選手権が12月28日に開幕。今大会のオープニングゲームとなった東京B代表の帝京と京都代表の京都橘との試合は帝京が2-1で競り勝ち、2回戦進出を決めた。 【フォトギャラリー】帝京vs京都橘 試合は前半5分、帝京がこの試合初のCKのチャンスでDF3ラビーニ未蘭(3年)が頭で押し込み、先制。その後、帝京は京都橘のセットプレー、ロングスローでやや押し込まれる時間帯があるなか、迎えた後半33分、CKからMF10桐原惺琉(3年)に頭で押し込まれ、同点に追いつかれた。しかし、直後の35分、MF8砂押大翔(3年)からの浮き球のパスをFW10森田晃(3年)がつなぎ、最後は途中出場のFW9宮本周征(2年)のゴールで勝ち越し、勝利を収めた。 シュート数は帝京11本、京都橘の10本とほぼ同数。しかし決定機と言えば、京都橘に分があった。「決定機のうち、いくつか決まっていれば」と京都橘の米澤一成監督が言うように、あと数センチあるいはバー直撃の惜しいシュートはあったが、割ることができなかった。その理由を米澤監督は帝京の球際の強さ、ラインの統率の高さをして「鍛えられた守備」と評した。 たしかに帝京はここぞというとき、身体を投げ打ったDF陣の踏ん張りやGK1大川藍(3年)のセーブにたいぶ助けられた。DF3ラビーニ未蘭は「(京都橘の)攻撃がものすごくて守備で耐える時間が続きました。気持ちとしては大変だった。身体を張ってゴールを守る気持ちでプレーしました」と苦慮した様子。帝京はよく耐えたといえる。 だが残り7分での同点に追いつかれてしまう。勢いは京都橘。観客の多くは延長戦を考えていただろう。しかし、帝京は失点からわずか2分後に追加点を挙げた。このわずかな時間に帝京がこの1年培ったものが詰まっている。 同点に追いつかれた直後、主将のMF8砂押はイレブンを集めてこう言った。「みんな笑おう」。 「みんなを集めて笑え、笑えと。笑顔でやろうと声をかけてくれました。そこで正気を取り戻しました。残り7分もあったので、しっかり気持ちを切り替えることができました。これまで劣勢の試合で取りこぼす試合が多くありましたが、ことしは練習から強度高くできており、実際の試合でも最後まで強度を落とさず、できています。自分たちが一番いい時には声が出て、選手内で盛り上げあっています。(今回も)自分がピッチに入ったときには、そんなムードができあがっていたので絶対に勝てると最後まで信じていました」(FW9宮内) MF8砂押はこう話す。 「(同点に追いつかれて)全員の顔が下がっていたので、『みんな笑おう』と言いました。下を向く時間を減らすために、点を取りに行くというより、自分たちのサッカーをしに行くことを意識してみんなに伝えました。この1年、点を決められたときは全員が集まって笑顔をも一回、取り戻そうとずっと伝えてきました」 そんなチームの成長を帝京・藤倉寛監督はこのように明かした。 「ことしは砂押を中心にピッチ内で解決してきた場面を多くみてきました。ゴールへの近道を自分たちで見つけ出せるようになりました。形を求めるというか、ゲーム中に感じながらやろうというのがことしのチームの集大成だなと感じます」 同点から追加点までの2分間が凝縮された藤倉監督の言葉といえる。 15年ぶりの全国出場。さらに初戦突破で「古豪復活」の気運がさらに高まるなか、新生・帝京の時計の針は力強く刻んでいく。 (文=佐藤亮太 写真=矢島公彦)