『オクラ』連続爆破事件の犯人に衝撃走る 宇梶剛士が“刑事の勘”でつかんだ真実
未解決事件と日常の対比が意味するもの
執念と努力と根性。気の遠くなるような仕事を、定年間際の鷲沢は繰り返してきたのだろう。『オクラ』には地味な「作業」をないがしろにしないという特質がある。未解決事件と並行して、幾多(橋本じゅん)たちは通常業務のデータ入力を日々の仕事として遂行している。淡々と過ぎる日常と未解決の凶悪事件は一見すると対照的だが、実は表裏一体の関係にある。事件は時間の経過とともに日常の一部になる。未解決事件の捜査は日常の中で記憶を風化させない試みであり、生活する中で見過ごしてしまう小さな変化に目を向けさせることになった。 愁(観月ありさ)の腕にあった虎のタトゥーは本当にシールだったのか。当時の愁は人に言えない秘密を抱えて、孤独に生きていたのだろう。愁を犯人として特定した手法は千寿らしいやり方だった。利己と倫子に協力を仰ぎ、フェイクの証拠と事実を示しながら、ギリギリまで相手を信じ、また信じたからこそ自ら犯人として名乗り出るように仕向けたのだ。最悪の場合を想定しながらも、そうであってほしくないと願う相反する心情が、反町隆史の伏せた視線と沈黙に現れているようだった。 視点が過去から未来へ移り、物語は警察組織がひた隠しにする謎の核心に迫りつつある。全てを知ったとき、千寿と利己は何を思うのだろうか? 余談だが、鷲沢役の宇梶剛士は身長が190cm近くあり、杉野遥亮も同じくらいある。長身の二人がさっそうと歩む姿は画面映えして迫力があった。ある意味、これも刑事ドラマが培ってきた様式美と言えなくもない。
石河コウヘイ