琴桜、悲願の初V 祖父と孫の2代横綱成就へ重なる足跡…先代の故郷・鳥取の思いも背負い「やっていくだけです」【大相撲九州場所】
◇24日 大相撲九州場所千秋楽(福岡国際センター) 大関琴桜(27)=佐渡ケ嶽=が1敗で並んでいた豊昇龍(25)=立浪=との大関同士による結びの一番を制し、初優勝を果たした。祖父の元横綱が1973年名古屋場所で自身最後の5度目の優勝を遂げて以来、「琴桜」の優勝は51年ぶり。父で師匠の佐渡ケ嶽親方(元関脇琴ノ若)が届かなかった賜杯を、ついに抱いた。来年の初場所は、豊昇龍とともに綱とりへ挑む。 ◆鳥取の名所があしらわれた横綱琴桜の三つぞろいの化粧まわし【写真】 鋭い目つきのまま琴桜が、大きく息をつく。少しだけ表情が和らいだ。相撲の流れは覚えていない。無我夢中で歓喜の瞬間を迎えた。結びで21年ぶりの大関同士の相星決戦。豊昇龍に右上手を許したが投げをこえらえ、逆転のはたき込み。自己最多の14勝目を挙げ、初めて賜杯を抱いた。
取組直後、横綱と優勝力士だけが陣取る東の支度部屋の一番奥に初めて、腰を下ろした。「土俵に上がる時、自分で思っている以上に高ぶっている部分があった。しっかり落ち着こうと思って集中して、最後に出てしまった」。土俵上の吐息は、充満した気合そのものだった。 大関5場所目の27歳での初Vは、しこ名を受け継いだ祖父で先代佐渡ケ嶽親方の元横綱琴桜(故人)の足跡と、ぴたりと重なる。「間に合ってよかったです」。26日の祖父の誕生日直前に孝行を果たし、ほほ笑んだ。 さあ綱とり。「先代は横綱。『ここで満足するな』と言われると思う」。視線は番付の頂点に向けている。祖父と孫の2代横綱の成就に向け、先代の地元・鳥取県倉吉市ではおそろいの三つぞろいプランが早くも浮上している。 地固めは済んでいる。先代が師匠だった時代の佐渡ケ嶽部屋後援会メンバーらでつくる「鳥取県桜友会」は、2019年夏場所後に新十両へ昇進した琴桜(当時は琴ノ若)に、先代の三つぞろいと同じデザインで色違いの化粧まわしを贈呈。同市の桜の名所・打吹山があしらわれている。 三つぞろいの残り2本は県東部の浦富海岸と西部の大山という、鳥取県の景勝地と桜。同会は「田舎ですがファン一丸で実現できたら」と意気込む。大関となり、化粧まわしの手持ちも増えた琴桜だが「そう簡単に着けられる物じゃない。しっかり思いを背負って、やっていくだけです」と一本一本への思い入れを強調。祖父の故郷の心意気は間違いなく力になる。 支度部屋での万歳三唱でも、ほとんど表情を崩さなかった。「先代に追いつけるように、自分らしく強い気持ちで」。来年は、さらに琴桜の名を高めてみせる。
中日スポーツ