三上博史インタビュー「残りの人生、きれいに生きたい。これ以上汚れたり、濁ったりしたくない」ライブバージョンで復活する伝説的舞台“ヘドウィグ”を通して伝えたいこと
20年の人生を注ぎ深みの増したライブ
俳優とシンガー、さまざまな“顔”を見せ続け、常に新しい挑戦を繰り返してきた三上は還暦を越え、いままた別の顔を見せようとしている。 「今回の『ヘドウィグ~』は20年前の舞台と違ってライブバージョンなので、再演とはまた違う。バンドのミュージシャンはほぼ同じ仲間が揃いましたが、20年の間にぼくも含めて皆、いろいろなことがあって成長している。だからたとえ同じことをしても、20年分の人生が演奏に出て、深みは増すのではないかなと思うし、それを踏まえても、いまの自分に何ができるのか、何をしようか、いままさに考えているところです」 前回の公演では11曲のうち6曲の訳詞も三上が担当したが、今回も訳詞については表現を探しているという。 「ヘドウィグが伝えたいことは“壁を壊そう”ということ。でもいまはSNSの普及のせいか、相手と意見が違うと、取りつくしまもないほど関係が分断されてしまう。人の意見に対し、“自分はそうは思わないけれど、その意見もいいんじゃない? ぼくは責めないよ”という柔軟さが欠けている人が多いと思うんです。自戒を込めてですが(笑い)。 年を取ると、自分を守るためか、どんどん頑固になります。でもそんな考え方を壊して柔軟でいたいと思います。 ぼくは残りの人生、きれいに生きたいんです。これ以上汚れたり、濁ったりしたくない。勝ち負けにもこだわりたくない。押しつけがましくなるのは嫌だし、理想論なのもわかっているけれど、今回のライブを通して、皆にも“そんなに傷だらけにならなくても大丈夫だから、きれいに生きよう”と伝えたいです」 プライベートでは喧騒から離れ、地方の山中に暮らすという三上。SNSや最新の流行にも疎いという。しかし舞台に立てば、常に新しい、これまでに見たことのない姿を見せてくれる。そんな三上の活躍から目が離せない。 【プロフィール】 三上博史(みかみ・ひろし)/東京都生まれ。高校在学中、劇作家の故・寺山修司さんに見出され、フランス映画『草迷宮』(1979年/日本公開1983年)で俳優デビュー。映画『私をスキーに連れてって』(1987年・東宝)で脚光を浴び、『君の瞳をタイホする!』(1988年・フジテレビ系)など数々の作品に出演。今年、寺山修司没後40年記念公演『三上博史 歌劇─私さえも、私自身がつくり出した一片の物語の主人公にすぎない─』を上演。映画、ドラマ、舞台と多岐にわたって活躍中。 【出演情報】 PARCO PRODUCE2024『HIROSHI MIKAMI/HEDWIG AND THE ANGRY INCH【LIVE】』 1997年に初演され、2001年に映画化。2014年にブロードウェイに進出し、トニー賞4部門受賞。日本では2004年に三上主演で初演、2005年に再演され、今回はライブバージョンとして復活する。 公演スケジュール■11/26~12/8東京・PARCO劇場■12/14~15京都・京都劇場■12/18宮城・仙台PIT■12/21~22福岡・キャナルシティ劇場 取材・文/土田由佳 撮影/政川慎治、矢口和也 ヘアメイク/赤間賢次郎(KiKi inc.) スタイリスト/勝見 宜人(Koa Hole inc.) 衣装/GALAABEND(3RD[i]VISION) ※女性セブン2024年11月28日号