三上博史インタビュー「残りの人生、きれいに生きたい。これ以上汚れたり、濁ったりしたくない」ライブバージョンで復活する伝説的舞台“ヘドウィグ”を通して伝えたいこと
トレンディードラマ全盛時代、ライブでイメージを打破
ライブと聞いて、三上にシンガーとしての印象があまりない、という人もいるのではないだろうか。しかし三上は、20代の頃からライブ活動を活発に行ってきた。当時は、“トレンディードラマのエース”として活躍してきた時代だ。にもかかわらず、全国ツアーもこなしていたとなると、かなり忙しかったのではないだろうか。 「そうですね、でもスタッフに恵まれていましたし、楽しかったです。当時のテレビドラマは、前の週に撮ったものを翌週に放送するようなスピード感で撮影していて、とにかく時間がない。連続ドラマなのに編集する時間がなくて、生放送するケースもあったくらいですから(笑い)」 だからこそ逆に、実験的なこともできたという。 「スタッフがぼくのことをよくわかってくれていて、先回りしていろいろ考えて役をくれたんです。 たとえばあるとき、“多重人格の役をやりたくない?”とプロデューサーに聞かれて、いただいたのが『あなただけ見えない』(1992年・フジテレビ系)の三重人格の役。最初は『ジキルとハイド』みたいな……と言われていたのですが、“連続ドラマは長丁場だからもうひとり人格が増えるかも”なんていうノリで役が3人に増えました(笑い)。 野島伸司さん脚本の連続ドラマ『君が嘘をついた』(1988年・フジテレビ系)の最終回を撮っている最中のロケバスの中では、プロデューサーから“次はどんなのをやりたい?”と聞かれたので、“日本では難しいかもしれないけど、フランス映画『ベティ・ブルー 愛と激情の日々』(1986年、本能のままに愛し合う男女の姿を赤裸々に描写し、世界的なロングランヒットを記録したフランス映画。監督はジャン=ジャック・ベネックス。日本公開は1987年。)のようなドラマをやりたい”と話しました。そうしたら、翌週には企画書があがってきて……。すごいスピード感でしょ(笑い)」 それが孤独なホステスと天才ピアニストの究極の愛を描いたドラマ『この世の果て』(1994年・フジテレビ系)だ。こうして役者として常に挑戦を続け、同時にシンガーとして40~50本ものライブをこなしていた。 「一時期、ドラマや映画の影響からか、アイドルのように見られていた時期があったのですが、ライブではその固定観念を崩すように激しいパフォーマンスをしていました。お客さんの期待をいい意味で裏切りたいという気持ちがあって(笑い)。それは今回のライブでも変わりません。シンプルでいこうというのは許されないと思っています」