すかんち結成から42年、ROLLYの現在地 大切にしている「言葉遣い」と仕事観
帽子屋・ハッター役「ついに来たか」
目の前でほほ笑む姿は確かに自然だ。そんなROLLYが挑むのが『ALICE THE MUSICAL』。演じるのは、イカれたふりをしている帽子屋・ハッターだ。その役どころに、周りは納得するだろうし、ROLLYも「ついに来たか」という心持ちだったという。 「お話をいただいた時から、おそらくこれは帽子屋だろうな、と思いました。ティム・バートン監督とジョニー・デップが組んで作った『シザーハンズ』、『チャーリーとチョコレート工場』とか、『アリス・イン・ワンダーランド』とか『いつかこんな作品をやってみたいな』と思っていましたし、友だちからも『やらないのか』と言われていました。自分の人生の中で一度はやらなければならぬ役柄だったので、予定通りでした」 ROLLYにとっては、「帽子屋・ハッター」も自身の地続きにあるのかもしれない。「ROLLYがハッターなのか、ハッターがROLLYなのか」と言って笑う姿こそが、「ハッターなのでは」と思わせている。とはいえ、ROLLYはミュージシャンの印象が強い。「芝居」という仕事に対してはどのように考えているのだろうか。 「僕はこうもり男みたいなのでね。芝居の現場に行ったら、『自分はミュージシャンだから、完全にお芝居の人にはなりきれない』というジレンマがあります。ただ、本当のミュージシャンのところに行くと、どうも居場所がよろしくない。なので、フラフラ、フラフラと浮草のように生きてまいりました」 では、ミュージシャンとして、ミュージカルへの取り組み方、ロックへの取り組み方では変わってくるのだろうか。すると、「どちらかと言うとわりとミュージカルの方が好きです。目指すのはミュージカルなんですよね」と返した。 「ソロアルバムの1曲目はいきなり10分ぐらいある曲なんですよ。すかんちの頃からミュージカルっぽい曲もやっていたんですけどね。本当にやりたいのは、ミュージカルのような音楽とロックが合体したもの。今回もいろんな音楽が出てきますが、全てが刺激になります。物語のクライマックスにはスリリングなシーンがあるんですけど、そこでは壮大な音楽が流れるんです。ゴジラのような、スターウォーズのような。『これ、いいな~』とうれしくて、喜んでやっています。あとは、ミュージカルの音楽にハードなロックギターが入ったものがやりたいですね」 こんなふうに言うのも、「種をまいている」ことになるのかもしれない。いつか実現させてくれそうな予感がある。 「そうすると、『他の役者さんにはない独特な感じになるんじゃないかな』と思ったりもします。そういう舞台でもギターを弾かせてもらうことはあるんですよ。何しろ、本当の役者さんではないので、できる限りのことはやりますが、『ギターが弾けたら羽が生えたように楽しくできるのにな』と思ったりもします」 『アリス』という誰もが知っているような作品でありながら、「ROLLYが出演するとまた少し違うものが見られるのでは」という期待が高まってしまう。 「僕は子どもの時、姉2人と『長靴をはいたネコ』という作品を見に行ったんですけど、その日の帰りは、作品の曲をずっと歌っていました。そんな風に思わず真似をしてしまうような、印象的なものになって、さらに夢の中に出演できたら最高ですね。夢で会えるようにがんばりたいです」 アリスの舞台でどのようにROLLYらしいハッターが見られるのか、上演を楽しみに待ちたい。 □ROLLY(ローリー) 1963年9月6日、大阪・高槻市出身。82年、ROLLYを中心としたロックバンド・すかんちを結成。90年、『恋のT.K.O』でメジャーデビューを果たす。96年に解散した後はソロでの音楽活動、プロデュースの他、バラエティー番組、CM、映画、舞台などに出演。ミュージカルでは『ロッキー・ホラー・ショー』『ピーターパン』『三文オペラ』などの出演歴ある。
ふくだりょうこ