「エネルギーに満ちた昭和」を生きた武田鉄矢、令和は「センターに立ちながらマネジャーばかり見ているアイドル」
歌謡曲を軸に昭和の世相を深掘りするBSテレ東「武田鉄矢の昭和は輝いていた」(金曜夜8時)が静かな人気を集め、放送12年目に突入した。戦前から戦後復興、高度経済成長へと連なった波乱の時代に引き寄せられるのは単なるノスタルジーなのだろうか?(文化部 旗本浩二) 【写真】武田とともに繁田美貴(右)が司会を務める
12年目のBSテレ東「昭和は輝いていた」
番組は、BS放送の主な視聴者が、昭和時代の実体験がある年齢層であることから、今一度、往時の大衆文化を振り返ろうと2013年4月にスタート。初回は美空ひばりを特集し、その後、ボウリング、喫茶店、深夜放送、ジーンズ、スーパーカー、赤塚不二夫など多種多様なテーマを取り上げ、進行役の武田鉄矢らがゲストを招いてトークを繰り広げてきた。
中でも時代を彩ったヒット曲や歌手をクローズアップすると視聴率も好調だったため、現在も担当する橋本かおりプロデューサーが引き継いだ17年頃から、歌謡曲を取り上げてヒットの背景や知られざるエピソードを伝える趣向が中心となった。昭和歌謡を紹介する番組は、他のBS局でも花盛りだが、どれも歌を流すのが中心だ。この点、橋本プロデューサーは「ただの歌番組では物足りないんですよね」と話し、自身の番組では毎回、若手ディレクターも含め、徹底的にテーマを深掘り。「掘れば掘るほど昭和歌謡は面白く、視聴者の食いつきもいいんですよ」
また、武田自身も独自に様々な情報を調べあげて収録に臨み、台本にないエピソードを披露して番組の幅を広げるのに貢献しているという。「収録後もまだ話し足りないぐらいで、とても気に入ってくれているようです」
王道特集から「発禁の歌」「イントロの美学」まで
それらの周辺情報を基にした豊富な切り口も魅力だ。例えば、これまでに「戦後三羽烏 岡晴夫 近江俊郎 田端義夫」「こころに沁(し)みる別れの名曲」「藤圭子SP」「街を彩った歌謡曲~札幌・函館」といった王道的放送回がある一方、「歌に出てくる花の謎」「昭和を盛り上げた宴会ソング特集」「発禁の歌」「イントロの美学」「輝きを増したカバーソング」などの変化球も織り交ぜる。