豊昇龍1敗キープ、2度目Vへ高まる集中力 大相撲九州場所12日目
○豊昇龍(寄り切り)●正代(大相撲九州場所12日目=21日) 制限時間前の仕切りで、対戦相手の熊本出身・正代を後押しする「正代コール」が館内に大きく響いたが、豊昇龍があおられることはなかった。 隙のない鋭い相撲だった。真っすぐ当たり、一押し、二押しした後、右を差しながら前に走る。2人とも土俵下に飛び出すほどの勢いで寄り切り。「意外と落ち着いていた。良い感じで当たって、良い感じで相撲を取れたんで良かったと思います」。集中力は日を追うごとに研ぎ澄まされているように映る。 この12日目の白星によって、嫌な記憶は払拭(ふっしょく)できたに違いない。 まだ関脇だった令和4年の九州場所、豊昇龍は今場所と同じ1敗で11日目を終え、単独トップに立っていた。しかし、12日目から3連敗と大きく崩れ、優勝争いから脱落した。 あれから2年。初優勝も経験し、大関にも昇進した25歳は同じ轍(てつ)を踏まなかった。「終わったことなんで思い出すことがないように。終わったことは終わったこと。また新しい日が来るんで、その日のことしか考えていない」。1敗のトップをキープし、早口で〝無心〟を強調した。 今場所は途中、投げで相手を仕留める日が続いたが、ここに来て再び前へと攻める相撲が戻ってきた。 大関8場所目。「『前に出ない大関』と(周囲に)言われたことが一番嫌だった」。2度目の賜杯は正攻法でつかみに行く。(宝田将志)