いかに「手の通り道」を確保するかが至上命題!? 海外プロたちの特徴「ワイドバックスウィング」から見える、最新ゴルフスウィング研究のトレンド【ゴルフメカニクス研究所 #2】
骨盤・体幹・腕・クラブの動く順番(キネマティックシーケンス)を整える
日本ではしばしば「カラダを回し続ける」、「カラダとクラブが同調」などと表現しますが、要は再現性を伴ってヘッドスピードが上がれば良いわけで、そういうときに骨盤、体幹、腕、クラブがどのような順番で加速すれば合理的かということを可視化したものが「キネマティックシーケンス」になります。 モーションキャプチャーなどの技術を使って、それぞれの部位がどのように加速、または減速しているかを調べると、まず骨盤が加速、そして減速に向かうことで体幹が加速し、またそれが減速することで腕が加速し、また腕が減速することでクラブが加速していくという「シーケンス(順番)」になることで、インパクト時のヘッドスピードを最大化させることができるわけです。 つまり本当に「身体を回し続ける」と、おそらくヘッドはインパクトまでに充分に加速できないことになりますし、骨盤が回り続ければ両手の下りてくるスペースがなくなって「詰まった」スウィングになってしまいます。 このように書いたりグラフを出したりするとなんだか難解に思えますが、野球の投球動作で言えば、まず脚を踏み込んで、ついで体幹がやや回転し、そしてひじが目標に向かい、最終的に前腕がリリースされることで球速が最大化する、というのは確か保健体育でも習った気がしますので、よく考えればゴルフでも当たり前の話ではないかと思います。
そしてTitleist Performance Institute (TPI)
私事ですが、今年の3月からTPIのレベル1、ゴルフのレベル2をオンラインで受講し、11月に渡米してゴルフのレベル3という資格を取得してきました。 TPIではトッププロからアマチュアまで、様々なレベルのゴルファーの動作や弾道の計測、解析を行っていますが、結局のところゴルフスウィングにおける最大の難関は、「いかに『アーリーエクステンション』を回避するか」であるということでした(私の個人の感想です)。 「アーリーエクステンション」というのは、スウィング中にアドレス時点の位置よりも骨盤がボール方向にせり出していくことを指します。写真の松山選手は(当たり前ですが)きっちり赤線の外側に骨盤の位置を維持してスウィングしています。 これができていないと、両手の下ろし場所が狭くなる、あるいは上半身がボールに近づいてしまうため、上半身を起き上がらせることでボールとの距離を調整しないとインパクトできません。結果としてクラブのライ角が立った状態でインパクトせざるを得ず、ボールに充分なエネルギーを与えられない(飛距離が減少)、かつ「ボールが低くなる」という問題が起きます。 最近では弾道測定器の発達により、ヘッドスピードからクラブの設計通りの理想的なスピン量、高さ、キャリーになっているかを確認することができます。数値が芳しくない場合は、道具を変えるか、スウィングを変えるしかありません。