サントリー、IBM、パーソルら大企業幹部も注目する“サードプレイス・キャリア”。経験活かし、NPO経営に参画
社会課題の解決に日々奮闘していて、資金調達や人事・組織など経営戦略まで手が回らない──。 【全画像をみる】サントリー、IBM、パーソルら大企業幹部も注目する“サードプレイス・キャリア”。経験活かし、NPO経営に参画 NPO法人をはじめとする非営利セクターにありがちなそんな悩みを、企業の経営幹部の経験とノウハウでサポートしようという試みが注目されている。 ビジネスパーソンの間では、本業以外の“サードプレイス的キャリアプラン”の一つとしての関心も高まっているようだ。
サントリー、IBM、パーソルなど16社が参加
9月下旬の夕方、東京・南青山のビルの一室にさまざまな企業の幹部が続々と集まってきた。 サントリーホールディングス、パーソルホールディングス、IBM……大企業を中心に16社約20人が参加したのは「ボードマッチイベント」。NPO法人クロスフィールズが経済同友会、新公益連盟と連携し、同友会会員企業の経営層がNPOなどに経営参画するための橋渡しを行う「ボードマッチプログラム」のキックオフ的イベントだ。 「2024年は経済同友会の会員企業を中心に声がけをしたので、前回のようなオーナー企業の社長だけでなく、いわゆる伝統的な大企業の役職者の方々に多数ご参加いただきました。キャリアの選択肢として関心が広がってきたと思います」 クロスフィールズのディレクター、西川理菜さんはそう話す。 そもそも、ボードマッチプログラムとはどのような取り組みなのか。 最初は、ボードマッチイベントで団体と企業参加者がお互いについてざっくばらんに語り合うことから始まる。そこでNPO側が“意中”の企業参加者が見つかった場合、1週間以内に経営参画のトライアルをしてみないかと打診。 マッチングした場合は、4~5カ月間にわたって試験的にNPOの経営に参画する。その後、正式にアドバイザーや役員としての参画の有無を決定していくという流れとなっている。
トライアル経営参画で、株式会社設立をサポート
第1回目の2023年は、8人の経営トップが半年にわたって団体の経営に伴走。最終的に6人が何らかの形で経営参画を決めた。 その1人、独立系ベンチャーキャピタルiSGSインベストメントワークス代表の佐藤真希子さんは半年間、宮城県石巻市の一般社団法人イシノマキファームに伴走したという。 イシノマキファームは、社会的弱者もそうでない人もそれぞれの得意を生かして同じ賃金で働く社会の実現を目指す。そのためにホップを栽培し、クラフトビール「巻風エール」を製造・販売している。 佐藤さんは、月一のオンライン壁打ちや石巻でホップ積みを手伝ったりしながら伴走した。その中で実感したのは資金調達の難しさだったという。 「例えば、カンニングマシン(缶詰機)が700万円ほどするんですね。ビジネス界からすると『調達すればいい』と思うかもしれませんが、NPOはそう簡単にいきません。 クラウドファンディングや補助金、企業からの寄付金など、さまざまな方法を検討しましたが、助成金の申請から入金までの時間がかかったり、企業のCSR部門への依頼が難しかったり。ビジネス界とは異なる難しさを感じました」(佐藤さん) そうした中で、株式会社が必要だと考えたという。 「クラフトビールの製造から販売までを一般社団法人ですべてやるのは難しいと感じたんです。株式会社のほうが、クラウドファンディングも含めた資金調達が容易にできる。今ある一般社団とは別に株式会社を立ち上げ、組織を分けた方がいいと考えました」(佐藤さん) イシノマキファームの代表・高橋由佳さんも、佐藤さんが背中を押してくれるならと株式会社の設立を決断。ボードマッチプログラムの終了後、佐藤さんは高橋さんから打診を受け、正式にアドバイザリーボードとして経営参画することになった。