映画「オッペンハイマー」の理解しやすい観賞法 ノーラン監督の「時間」を操る巧みな演出とは
3時間の超大作でありつつも、退屈することのない作品
「オッペンハイマー」の上映時間は180分。このところ「バビロン」(デイミアン・チャゼル監督、185分)や「キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン」(マーティン・スコセッシ監督、206分)など、著名監督の3時間超えの長尺作品が話題を集めているが、「オッペンハイマー」もそれらに負けず劣らず、渾身の超大作となっている。 上映時間がかっきり3時間とはいえ、「オッペンハイマー」は前述のようなノーラン監督が得意とする「時間」を巧みに操る演出と切り替えの早い場面転換で、観賞時間は2時間超くらいに感じる。人によって多少受け取り方は異なるとは思うが、「オッペンハイマー」は、観ているうちに作品への深い没入感から、退屈することなくエンドクレジットまでたどり着く。 「私がやりたかったのは、歴史の大転換の絶対的中心にいた人物の、魂と経験のなかに観客を導くことだ。好むと好まざるにかかわらず、J・ロバート・オッペンハイマーはいまだかつてない最重要人物だ。彼は良くも悪くも私たちが生きるいまのこの世界をつくり出した。彼の物語を信じるには、それを目にするしかない」 クリストファー・ノーラン監督は、「オッペンハイマー」での自身の試みについてこのように語っているが、その言葉通り、主人公であるオッペンハイマーになりきったようなリアルな映像体験が、この作品からは得られる。ぜひ最初は劇場の大きなスクリーン(できればIMAX)で観たい作品でもある。
稲垣 伸寿