変わる電力会社。新規ビジネス部署に100人超、関西電力が「電力じゃない事業」頑張るわけ
「保守的」「お堅い会社」 生活インフラを支える電力会社に対して、そんなイメージを持っている人は多いかもしれない。そんな中、実はスタートアップ1186社が選ぶ「イノベーティブ大企業ランキング」の上位に名を連ねている電力会社がある。関西電力だ。 【全画像をみる】変わる電力会社。新規ビジネス部署に100人超、関西電力が「電力じゃない事業」頑張るわけ 関西電力は2024年3月期の決算で、純利益が4418億円と過去最高を更新した。ただ、売上高の4兆593億円のうち、大半は電力事業が占めており、原料価格や為替、原子力発電所の稼働状況によって業績が大きく左右される。 関西電力に限ったことではないが、電力会社の間では本業である電力事業以外にも収益の柱を作り、事業ポートフォリオを強化しようという動きがある。 関西電力は、1990年代から社内起業制度を設けて長年にわたって新規ビジネスの創出に取り組んできた。電力業界が大きな影響を受けた東日本大震災後には、若手社員の声を含めた「社員主導」の形で、新規事業創出に特化した組織が発足。現在は100人を超える社員が在籍する。 関西電力の嶋田悠介氏（40）は、震災後にこうしたイノベーション組織の必要性を訴えた一人だ。自身も低速モビリティ事業の子会社・ゲキダンイイノを立ち上げ、代表として新規ビジネスを育てている最中だ。
「電気だけではしんどくなる」
関西電力のイノベーション推進本部では、子会社として旅行事業や使用済みパソコンの再生事業などを抱えている。どれも電力事業からは直接的に連想しにくいものばかりだ。いずれの子会社も嶋田さんをはじめとした30代後半～40代の社員が社長に就いている。東日本大震災後の混乱期を経験してきた世代だ。 「東日本大震災は電力会社にとってすごく大きくて。給与が下がったりボーナスが出なかったりする中、当時、電力事業はどうなるんだろうという閉塞感が社内に漂っていた。辞めていく人もいましたが、残って何か新しいことができないかを考えるメンバーもいた。それがk-hack※の動きや今の新規事業につながっている」（嶋田さん） ※k-hach（ケイハック）：若手社員が集まって新規事業を考える関西電力社内にある有志団体。 嶋田さんは2009年に関西電力に入社した。2011年の東日本大震災後、中期経営計画の策定に携わったことが現在の「電力会社らしくない」業務の出発点になっている。 「電力業界としては価値観も含めて大きく変わるタイミングでした。その時に経営企画のスタッフだったので、会社はどうなるのか、10年後をどう描くのかを考えた時に、電気事業一本だとしんどくなる未来が見えてくるんじゃないかと思った」（嶋田さん） 先行きが不透明な中、新規事業だけを考えるチームがあってもいいのではないか ──。 自然とそうした議論がなされ、当時嶋田さんが所属していた経営企画室が主導する形で2016年、イノベーション推進本部の前身にあたる「イノベーション推進グループ」が新設された。当初のメンバーは6人。大阪市北区中之島にある関西電力本店の一角でスタートした。 「当時はまだオープンイノベーションやイノベーションに関する専属組織を作ることが珍しかったので、先行して取り組んでいる事業者から実際に内容をヒアリングして、徹底的に調べ歩きました」（嶋田さん）
