出生届の嫡出規定違憲訴訟で東京地裁が「合憲」判決 子の不利益認めたが扉開かず
出生届に「嫡出子」か「嫡出でない子」かを書かせる戸籍法の規定は法の下の平等を定めた憲法14条などに違反していると、東京都杉並区の富澤由子さんが国を相手取って嫡出規定の撤廃と損害賠償を求めていた裁判の判決が8月1日、東京地裁であった。大須賀寛之裁判長は「法律婚主義の下で、父子関係の成立について嫡出子と嫡出でない子との間に戸籍取り扱いに違いが生じることには合理性がある」と請求を棄却した。 嫡出とは「法律上の婚姻関係にある女から生まれる」(『精選版 日本国語大辞典』)こと。婚姻届を出せない・出さない人は、わが子の出生届で「嫡出でない子」とするよう求められる。富澤さんは「生まれた子が嫡出かそうでないかの選別を強制するなど人権侵害そのもの」と、撤廃を訴えてきた。 弁護士をつけない本人訴訟で、約2年間に11件の準備書面と109件の証拠書類を一人で作った。「身を削るようにしてやってきたのに、判決は耳を疑うものでした。差別を差異と言い、『合理的』を乱発していて落胆しました」。 富澤さんは1983年に事実婚で男児を出産。杉並区役所に出した出生届には、パートナーの藤田成吉さんを届出人で「父」と記載し、嫡出欄は記入しなかったため、受理されなかった。息子はその後12年間、戸籍も住民票もない状態に。乳幼児健診の通知も就学通知も届かなかった。小学校に入学はできたが、息子は偏見に満ちた先入観の中で通学しなければならなかった。パスポートが作れないなどの不利益もあった。 大須賀裁判長は判決言い渡しでそのことに触れ、「原告の子が本来国民として享受できるはずであった福祉、教育等の行政上の支援を受けることが著しく困難な状態に置かれたことについては、誠に重大な事態であったと受け止めている」と述べた。それでも、戸籍の取り扱いで差をつけている制度が直ちに憲法違反であるとはいえないという姿勢を変えなかった。 富澤さんは「(同情しても)請求を棄却するのは、基本的人権の侵害を放置していること。差別があると認めたら謝罪し賠償するのが常識ではないか」と反発する。