出生届の嫡出規定違憲訴訟で東京地裁が「合憲」判決 子の不利益認めたが扉開かず
「運用改善」では不十分
裁判後の記者会見には、これまで戸籍や住民票の差別記載で違憲裁判を闘ってきた人たちも参加。菅原和之さんは「2013年に最高裁で敗訴したが、判決は出生届の嫡出欄は事務処理上不可欠の要請とまではいえないとし、子の不利益についても触れていた。11年たっても婚外子差別の考え方が変わらないのは残念」と話す。国際機関への働きかけを続けている福喜多昇さんは「国連加盟国はみな法律婚主義だが、親の婚姻の有無で子どもの身分を分けている国は先進国ではほとんどない。法律婚主義と言えば婚外子差別が許されるわけではない」と指摘した。 今回の判決では、法務省が13年に、嫡出欄への記載を求めても届出人が応じない場合、強いることなく受理するようにという通知を出したことなどを「一定の運用改善が図られてきた」と評価した。しかし、この通知が全国自治体の戸籍担当者にきちんと伝わっているとは言えず、トラブルはしばしば起きている。通知のことを知らず、嫌な思いを抱きながら嫡出欄に記載している人も少なくない。 富澤さんの裁判で陳述書を出した神奈川県の女性も、つらい思いをした一人だ。夫婦別姓での婚姻届が不受理になり、事実婚で昨年出産。夫が嫡出欄を記載しない出生届を出したら、役所で「受け取れない」と言われ、女性も含めて何度もやり取りしなければならなかった。通知のことを伝えて最終的には受理されたが、「産後の体がきつい状態で、さらに追い打ちをかけられ涙が出た」と語る。女性は、産院でも事実婚での出産だと言うと、「やめた方がいい」「父親のいない子になる」など差別的な言葉を浴びせられたという。 富澤さんは「運用では不十分で、婚外子差別のもとになっている嫡出概念をなくすべきだ。法律改正されなければ抜本的な解決にはならない」と言い、控訴する方針だ。
室田康子・ジャーナリスト