阪神・藤川球児監督が断行した「禁煙」ルール 指揮官は自身の考えを貫くことが大切 野球がぜんぶ教えてくれた 田尾安志
阪神の藤川球児監督が就任早々、チーム活動中の禁煙ルールを断行した。思い切ったな、というのが率直な感想。だが、すでにDeNA、ロッテ、日本ハムも禁煙を導入しているという。人気が高い阪神だから話題になっただけで、もはや珍しいことではないのだろう。 たばこで思い出すのは、2004年に楽天が設立されたときのことだ。〝球団元年〟を翌年に控え、宮城球場(現・楽天モバイルパーク宮城)が本拠地として改修された。 初代監督だったこともあって、事前に設計図を見せてもらった。すると、選手らが使用する風呂もシャワールームもない。代わりに確保されていたのは、喫煙所。もはや笑い話だが、当時の幹部がヘビースモーカーで、真っ先に優先されたのが、たばこを吸える場所だったというわけだ。 西武では、渡辺久信(前ゼネラルマネジャー兼監督代行)がヘビースモーカーだった。名選手や名監督といわれる人も愛煙家が多かったという。毒薬変じて薬となる、ということわざがあるが、かつては「たばこも薬になる」と豪語していた選手もいた。昔はベンチ裏に行くと、たばこ臭いことが多かった。監督が吸うか、吸わないか。これがポイントだったように思う。 僕は、たばこは一切吸わないが、昔から周囲がどれだけ吸おうと全く気にはならない。吸っていようと、いまいと意識すらないほど。僕の生前の祖母がキセルで刻みたばこを吸っていた影響かもしれない。幼少の頃からキセルに刻みたばこを詰めるのは僕の役目だった。祖母が吸うのは全く嫌いではなかったが、不思議なものである。 今でこそ、たばこの健康被害はよく知られている。僕の次男がそうだったように、たばこは体が悲鳴を上げて、初めてやめる人が多い。確実に言えるのは、体は噓をつかない、ごまかせないということだ。愛煙家の選手にとっては、禁煙ルールは良い機会を与えてもらったと思えばいい。 藤川監督は自身の考えを外に向け、はっきりと示した。波風が立ったかもしれないが、自分がやるんだと思ったことを貫いた。試合でも、自らが全責任を背負うような作戦を取れる監督はそういない。今回はその第1弾といえるだろう。監督は試合で結果が出なければクビになるだけ。気にしないで、やればいいのだ。(野球評論家)