飛び交う大ブーイング「恥ずべき試合」で負けた西野ジャパンの問題点とは?
一方で所属クラブにおいて出場機会を失い、ゲーム勘やゲーム体力を著しく減少させていた浅野拓磨(シュツットガルト)と井手口陽介(クルトゥラル・レオネサ)も招集。ガーナ戦では乾と浅野は最後までピッチに立つことはなく、長谷部に代わった井手口も信じられないパスミスを犯した。 選手選考は監督の専権事項だが、それでも指揮官は21日から千葉県内で行ってきた合宿中に「予想以上に選手たちの状態が整っていない」と嘆いたことがあった。コンディションが整っていないのを承知のうえで、岡崎や乾、浅野らを招集したのだから無理もない。 むしろ西野ジャパンの初陣における最大のサプライズは、昨夏にFC東京から加入したポルティモネンセSCで10ゴール12アシストと大車輪の活躍を演じ、ハリルジャパンにおけるデビュー戦だった3月のマリ代表戦でもゴールを決めた中島翔哉の落選だった。 森岡亮太(アンデルレヒト)や久保裕也(ヘント)、堂安律(フローニンゲン)も然り。結果を残した選手が不在ならば、チームに躍動感は生まれない。後半から投入された香川も入れ込みすぎたのか、時間の経過とともにガス欠気味となり、『4‐4‐2』の左MFになってからは流れからも消えた。 「3バックとキーパーのコンビネーションや、3バック同士のチャレンジ&カバーなど、いろいろな課題が見つかった。勝ちたかった試合であることは間違いないけれども、4日間の練習でとんとん拍子に上手くいくとは思っていなかったので」 産みの苦しみであることを強調した田嶋会長は、ハリルジャパン時代から続く不振の延長線上にあると強調することを忘れなかった。 「もともと危機感だらけでやっている。決して滑らかな道とは思っていません」 ワールドカップの壮行試合でブーイングを浴びせられたのは、2度目の決勝トーナメント進出を果たした2010年の南アフリカ大会直前、岡田ジャパンが韓国代表に0‐2の完敗を喫して以来となる。 このときは半ば開き直った岡田武史監督が不振の司令塔・中村俊輔を外し、システムも『4‐2‐3‐1』から『4‐1‐4‐1』に、ポゼッション型から堅守速攻型に180度変える大なたを振るったことでチームはV字回復を遂げた。 しかし、今回はワールドカップ直前における指揮官交代という、未曽有の刺激がすでに注入されてしまった。迎えたガーナ戦で、確固たる手応えが得られなかったからか。一夜明けた31日は午前中の練習をへて午後4時に23人が発表される予定が一転して、一時的に解散することが深夜になって発表された。6月2日の離日を前に、西野ジャパンが大きく揺れている。 (文責・藤江直人/スポーツライター)