「オーラリー」の成功を支える「憂鬱で不安」な気持ち パリでの大舞台の裏側【2024-25年秋冬メンズコレまとめ】
ショーのテーマは“帰り道”
今季のテーマは“帰り道”だ。仕事を終えた後にジムへ向かう途中、友人との夕食の約束場所までの道、家族が待つ自宅までの帰路で感じる期待と高揚感。岩井デザイナーは、“帰り道”という日常の心なごむひとときから、コレクションのイメージを膨らませていった。「オンとオフの切り替え。そういう息抜きの瞬間ってかわいくていいなと思って」と、ショーでも“帰り道”の演出を盛り込んだ。
コレクションのベースは、「オーラリー」が得意とするテーラリングとワークウエアである。ショーは、シャツとネクタイの上にウールのジップアップブルゾンと、着古した風合いのアビエータージャケットを羽織ったファーストルックで開幕した。しっかり締まったネクタイが“オン”の緊張感を演出し、ゆったりとしたシルエットのボトムスの長めの裾が、丸みのあるレースアップシューズの上でたゆみ、“オフ”へと気が緩んでいく瞬間を切り取った。男女のモデルが交互に登場し、オフィスウエアから日常着、フォーマルを通ってイヴニングへとシームレスに移行していく。
素材は、軽量でハリ感のあるシェットランドウールに、アルパカ繊維をミックスしたツイード、スポンジのような弾力性を持つ保温性の高いメルトン、毛羽立つモヘアにフランネルのウールと、生地問屋が背景の強みを生かした多彩な上質素材はレイヤリングで強調する。表面に凹凸感のある表情豊かなファブリックは、「オーラリー」では定番であるニュートラルカラーの色彩に染まり、時折ターコイズやレッドのエネルギッシュなアクセントを加えながら、詩的な音色を奏でた。ウールボンディングのジャケットやコート、構築的なフォームのパーカと丸々と膨らんだパッファージャケットは、気の知れた仲間と過ごすリラックスした週末のオフ時間を美しく彩る。その足元には、2019年から協業している「ニューバランス(NEW BALANCE)」とのコラボレーションスニーカーが軽快さを加える。今季は“990v4”のスタイルにダスティーブルーとブラウン、ベージュのトーンで、スエードとメッシュをたっぷりと使った。