「バス専用マス」に停めないで… 高速バス「休憩」の死活問題 空いてるエリアに行け?難しいんです
NEXCOはかなりバスに配慮してくれている
ツーマン運行の高速バスやバスガイドが同乗する貸切バスの場合、交替乗務員やガイドが先にバスから降りてパイロンを脇に寄せてから駐車します。ワンマン運行の場合は、パイロンの間をうまくすり抜け、一度切り返してマスの中に車体を上手に収めるシーンをよく見かけます。 週末など混雑する日には、高速道路会社(NEXCO3社など)が手配した交通誘導員が車両を誘導してくれるケースも増えてきました。無線を活用し、一般車を空きのあるエリアに誘導してSA構内の渋滞を抑制するとともに、バスが来れば専用マスに誘導したうえで、時には駐車しやすいようにパイロンを脇に寄せてくれます。 なお、バス専用・バス優先駐車マスがサービス施設近くにあるということは、多くの歩行者の往来があるということでもあります。歩行者通路に当たる部分の舗装面を緑色に塗って車路と明確に分ける例が増えていますが、それでも、隣のバスが死角となって歩行者を視認しづらいこともあります。発進時などに誘導員が歩行者に注意を喚起してくれるのは大変助かります。 さらに、ETC2.0の通信機能を活用し、バスを検知して自動的にボラード(車止め)が下降するバス専用マスも設けている施設もあります。 ただ、特に夜行便において、特定のSAで駐車マスが不足する状態は以前から続いています。高速バスは8割以上が昼行便であり夜行便の比率は小さいのですが、夜行便は、首都圏と京阪神発着の比率が極めて大きく、かつ特定の時間帯に集中するという特徴があります。 そのため、首都圏と京阪神の出入り口に当たる東名の海老名SA、名神の草津PAで、深夜と早朝に休憩が集中するのです。
「わざわざ海老名行かなきゃいいじゃん」ができない理由
以前、首都圏発着の夜行便は、新宿、東京ディズニーリゾート、横浜といった各停留所から別々の路線が発着していました。しかし2002年に高速ツアーバス形態が認められ新規参入が相次ぐと、夜行高速バスの市場が急拡大するとともに、「東京ディズニーリゾート→東京駅→新宿→横浜」という風に多数の停留所を経由する便が急増しました。京阪神や名古屋周辺でも同様です。 経由地が少なかった頃、首都圏~京阪神の夜行便の休憩場所は、東名の足柄SA、浜名湖SA、名神の多賀SAというのが定番でしたが、起終点の前後に各停留所を経由する時間が伸びたことで、最初と最後の休憩場所が、都心により近い海老名SAと草津PAに移っている傾向です。 また首都圏~京阪神の高速バス運行便数は、規制緩和前に比べて何倍もの規模になっています。さらに同区間を走行するトラックの量も膨大で、深夜、早朝の両施設はパンク状態です。 SAでの休憩といっても、トイレや食事のための短時間のものから、仮眠や時間調整を兼ね長時間にわたるものまであります。高速バスの休憩はほとんどが前者ですが、ごくまれに、乗務員の仮眠を目的として90分から120分程度、SAで休憩することがあります。ただ、高速バスがこのような長時間休憩をする際は、混雑する施設や時間帯を避けるように運行ダイヤが組まれます。 一方、海老名SAや草津PAで深夜早朝に休憩するトラックの中に長時間駐車が多いのであれば、何らかの方法で混雑の少ない施設へ誘導をお願いしたいものです。 また、最近のSA・PAの充実ぶりには目を見張るものがあります。高速バスにとって休憩場所という位置づけだったSA・PA ですが、それ自体が目的地となる可能性もあります。 中央道野田尻の下り線バス停が敷地内にある談合坂SA(上り線バス停は下り線SAに隣接)や、正式にはPAではありませんが富津館山道路のハイウェイオアシス富楽里(道の駅富楽里とみやまと同一施設)は、いずれも新宿や東京駅から高速バスで片道1時間半程度と手軽に往復でき、高速バス便も頻発しています。FIT(海外からの個人自由旅行者)にとって、滞在期間中に雨が降った日などの過ごし方として、日本独特のSA・PA の人気が高まるかもしれません。
成定竜一(高速バスマーケティング研究所代表)