改正入管法が成立、「育成就労」制度創設へ…技能実習制度に代わり27年までに始まる見通し
外国人材の育成と確保を目的とした「育成就労」制度を創設する改正出入国管理・難民認定法などは、14日の参院本会議で自民、公明両党、日本維新の会、国民民主党などの賛成多数で可決、成立した。新制度は現行の技能実習制度に代わって2027年までに始まる見通しで、政府は有識者会議を設けて詳細な制度設計を急ぐ方針だ。 【図】「技能実習」制度はこう変わる(中間報告書の修正案=2023年)
技能実習が途上国への技術移転を通じた「国際貢献」を目的とし、最長5年での帰国を前提としているのに対し、育成就労は「人材の確保と育成」を目的に据えた。外国人材を3年間で一定の技能水準に育成し、在留資格「特定技能」への移行を促すことで人手不足の解消を図り、長期就労につなげる狙いがある。
現行制度では、技能実習と、その後に5年間働ける特定技能1号とで受け入れ分野にずれがあったが、新制度では分野を同じにして、移行をよりスムーズにする。さらに技能が熟練の水準となれば、家族帯同の無期限就労が可能な特定技能2号に移行できる。
技能実習で原則禁止だった転籍(転職)についても、育成就労では、1~2年働けば、一定の日本語能力などを要件に同じ業種に限って認められることとなる。転籍制限は、低賃金での長時間労働など劣悪な環境につながる恐れがあり、「人権侵害の温床」と問題視されていた。実習生の失踪も後を絶たなかった。
政府は特定技能について、24年度からの5年間で最大82万人の受け入れを見込んでいる。政府は「いわゆる移民政策をとる考えはない」(岸田首相)としており、今後の有識者会議の議論では、これらを踏まえて育成就労の受け入れ見込み数や、日本人の雇用への影響などを協議する見通しだ。外国人労働者に選ばれる国として、労働環境の改善もさらに図っていく。
一方、新制度では将来的に長期滞在する外国人が増えることが想定される。改正法には、税金や社会保険料を故意に納付しない外国人の永住許可を取り消せる規定が盛り込まれた。取り消しは悪質な場合に限るとしているが、ガイドライン(指針)を今後策定して具体的事例を詰める。
小泉法相は14日の記者会見で「中身を早く詰めて、色々な意見を聞いて、多くの疑問や不安に応えていく」と述べた。