セルジオ・ペレス（レッドブル）

　レッドブルのセルジオ・ペレスの今後は、F1イギリスGPの惨敗の後、さらに厳しい状況にさらされている。ペレスがチームと結ぶ契約にはパフォーマンス条項があり、後任候補がテストを受ける予定となっている。ただ、もうひとつ重要な要素がある。 【動画】20年でF1マシンはどれだけ変わった？　レッドブル、2005年RB1と2024年RB20を雨のシルバーストンで走行比較 　ペレスがスピンによりQ1敗退を喫したイギリスGP予選の直後、サーキットにあるレッドブルのタイヤ保管エリアで、シニアエンジニアたちがチーム代表のクリスチャン・ホーナーと熱心に会話しているのが目撃された。 　具体的な会話の内容は本人たちにしか分からない。しかし情報筋によるとホーナー代表は、ペレスが予選でスピンを喫し、またもノーポイントで週末を終えることになり、チームのコンストラクターズランキングも危ういかもしれないという思いが高まっていることを十分に認識したようだ。 　チーム内で何かが変わらなければ……つまりレッドブルをマックス・フェルスタッペンの“ワンマンアーミー”からライバル同様2台体制に変わらなければ、他チームにタイトルを奪われる可能性があるということだ。シーズン序盤はレッドブルがダブルタイトル獲得に向けて順風満帆といった様子だったが、今や他チームからの脅威はもはや無視できないモノとなっている。 　確かに、フェラーリやマクラーレン、メルセデスの3強がそれぞれの強みを活かせるサーキットで力を発揮し、ポイントを奪い合っていることはレッドブルにとって大きな助けになっている。しかし現在の勢いを見ると、他チームも驚くほど順調な滑り出しを見せている。 　ドライバーズランキングではフェルスタッペンがリードを広げているものの、過去5戦を振り返ってみると、チーム争いの勢力図が変わったのは明らかだ。 　エミリア・ロマーニャGP以降のモナコGP、カナダGP、スペインGP、オーストリアGP、イギリスGPで、レッドブルは105ポイントを獲得。フェラーリは80ポイントだったが、マクラーレンは141ポイント、メルセデスは142ポイントを獲得した。 　ここ最近のような状態が続いたとしたら、レッドブルは1レースあたり7ポイント以上失っていくことになる。 　今シーズンはまだ12戦残っているということを考慮すると、マクラーレンは78ポイント差の首位レッドブルは射程圏内だ。メルセデスの進歩やマクラーレンにはミスもあったことを考えれば、この考え方は保守的とさえ言えるだろう。 　そして、こういったデータを猛烈な勢いで読み返しているレッドブルのエンジニアたちが、何かを変えなければならないと感じる時期なのは間違いないだろう。 　だからこそ、ペレスを中心とした現在の問題は、ペレスが調子を取り戻すために最適な手段を見つけることや、ダニエル・リカルドやリアム・ローソンがより良い選択肢になる可能性があるかどうかということだけではない。 　レッドブルが本当に今年のコンストラクターズタイトル制覇を確かなモノとしたいかどうかが、真の選択に関係している。 　イギリスGPの後、ホーナー代表があっさりと認めたように、6レースで15ポイントというペレスの貢献は、タイトルを争うチームにとって「持続不可能」なモノだ。 　実際、レッドブルのライバルチームたちでさえ、今年のコンストラクターズタイトルは最終的にペレス次第だと考えており、マクラーレンのザク・ブラウンCEOはシルバーストンで次のように語った。 「最終的にはペレス次第になると私は思う」 「今年いっぱいは、マックスがすべてのレースで1位か2位か3位になると思っていたほうがいい。おそらく3位より1位のほうが多いだろう」 「セルジオの不調が、我々にチャンスを与えている。ここ6戦と同じようにポイントを獲得していれば、年間を通じて仕事を成し遂げられると思う」