WBSS決勝に挑むドネアが井上尚弥と史上最大の世代抗争宣言「私の世代が壁になる」
ワールド・ボクシング・スーパーシリーズ(WBSS)の決勝(11月7日、さいたまスーパーアリーナ)でWBA、IBF世界バンタム級王者の井上尚弥(26、大橋)と激突するWBA世界同級スーパー王者で5階級制覇王者のノニト・ドネア(36、フィリピン)が31日、東京新宿区の帝拳ジムで公開練習を行った。10歳年下の井上との対戦に向け「若い世代の壁になる」と世代抗争であることを宣言。「負けたら引退」を否定し、今なおトップの力があると強調した。万全の準備に裏打ちされた動きを披露し、視察に訪れた大橋秀行会長、父の井上真吾トレーナーらを警戒させた。井上絶対有利の声が強い中で、レジェンドが、どんな意地を見せるのか。
「判定決着にはならない」
真っ新の2種類のテーピングが1ダース以上、ビニール袋に入っていた。ドネアは拳付近に保護のバットを入れて自らテーピングを巻いた。実父で、セコンドに付くトレーナーのドネア・シニアと、マネジャー兼ストレングス&コンディショニングコーチも務めているレイチェル夫人と並んで記者会見に応じた5階級制覇王者は、時折、笑顔を浮かべ、スーパースターの余裕と貫禄を漂わせた。 「集中力も高まっているがワクワクしている」 米国ラスベガスでの一次キャンプに続いてフィリピンの故郷のマニラでも時差調整もかねて2週間の二次キャンプを張ってきた。特にマニラは、酷暑だったため、「それが役立った。そこで厳しいスパーリングをしてメンタルが研ぎ澄まされた」という。 「とても素晴らしいキャンプができた。スパーでは違ったタイプの相手を用意して追い込んだ。精度も高度なレベルに持っていけた」 プライベートで何度も来日しているほどの新日家。日本のアニメ文化を愛し、サムライ精神に傾倒し「五輪書」の英語版を愛読するレジェンドのインタビューの態度はとても紳士的だった。 井上とのWBSS決勝は「キャリアの中で最も重要な試合」と位置付けている。スーパーバンタム級、フェザー級に上げてから4敗しているドネアにとって再び世界市場で輝きを取り戻すには絶好の舞台。 だが「試練にもなる」ことも理解している。 5月に英国グラスゴーでエマヌエル・ロドリゲス(プエルトルコ)を259秒で沈めた井上の準決勝は目の前で観戦した。 「信じられないほど素晴らしいボクサーだ。彼には才能がある。自分のような危険なスピードとパワーを兼ね備えている。最大の敬意を持って最大の注意を払う」 そうリスペクトした上で、「だからモチベーションが上がりトレーニングで追い込めたのだ」と説明した。 地元メディアには、先日、「この試合は判定にはならない」と発言した。 その真意を聞くと、こう答えた。 「判定にならない可能性は多いにあるだろう。この階級になかなかいないワンパンチKOのパワーをお互いが持っているからだ。私は長い時間の経験を積んできた。そこで何を学んできたか。適応能力だ。賢く立ち回らなければならないのならば、そうするし、打ち合うのならば打ち合う。勝つために何をすればいいのかという能力が私にはある」 プロキャリアは来年で20年。45戦40勝(26KO)5敗の戦績を誇るレジェンドは不敵に笑った。