ブラジルで活躍する日系企業の今(23)=現地密着の南米旅情報で勝負するH.I.S.サンパウロ支店
「ブラジルで活躍する日系企業の今」を紹介する本連載の第23回目はH.I.S.(エイチ・アイ・エス)サンパウロ支店の荒井亮磨支店長(53)に話を聞いた。2010年、日本有数の大手旅行社であるH.I.S.がサンパウロに支店をオープンした時は、今の日本とブラジルがより一層近づいた印象をブラジル在住の日本人にも印象付けた。コロナ禍では大きな打撃を受けた旅行業界にあって、同社は旅行以外の事業でも生き抜くために新たな挑戦を続ける。
旅行社のスタイルも新たな時代に
H.I.S.サンパウロ支店はメトロ・コンソラソン駅から徒歩1分弱、若者でにぎわうショッピングセンター3に隣接するオフィスビル内に位置する。事務所はコワーキングスペースであり、常時カウンターで来客と対面するという、かつての旅行社のスタイルとは大きく様変わりした。設立当初は商業施設のカウンターで顧客対応を行っていたが、コロナ禍の前から既に問い合わせや旅行予約はメールやSNSだけでの応対が増え始め、パンデミックが完全にそれを後押しした。 事前予約や飛び込みで対面の応対も行われているが、インターネットの利便性とサンパウロでは治安面のリスクを回避するために、オンラインでの旅行手配のニーズが高まっている。
旅行業界でのベンチャーとしての歩み
1980年に設立されたH.I.S.は、旅行業界のベンチャーとして格安航空券の販売の先駆けとなった。荒井氏は1992年に入社し、その翌年から同社は大きな注目を浴びはじめ、国内外のホテル事業、また1996年には航空会社・スカイマークエアラインズ(現在は別資本)の設立を発表するなど、新たなチャレンジを繰り返してきた。 同社がブラジルに進出した2010年は、国内外に1千店舗まで拡大しようという構想があり、荒井氏も2005年以降、マカオ、香港、上海、広州、ウラジオストック、サイパンなどに赴任して、日本人向けの旅行と訪日外国人の拡大を目指した。コロナ禍ではアゼルバイジャンの特産品の輸入などにも取り組み、2022年11月からサンパウロに赴任した。 これまでの赴任地は日本とも関わりの深い土地が多く、必ず日本語のできる人が身近におり、その点はサンパウロの日系社会も近い。「日本人移民の歴史のあるブラジルで、さらに現地に食い込んで当地に根付いたことをやるためにも、ブラジルを知る現地生まれ育ちの人に会社を切り盛りしてもらう時代」と荒井氏は今後を展望する。