永遠に終わらない?「湘南どこまで」論争
神奈川県相模湾沿岸に広がる湘南海岸といえば、サーフィンやヨットなどのイメージとともに、さまざまな小説や映画、楽曲の舞台になってきた地域です。いまや「湘南」という地名は、ひとつのブランドになっています。ところが最近、この湘南をめぐって論争が起きています。その論争とは「湘南はどこからどこまでか?」というもの。なぜいま「湘南」の範囲が議論になっているのでしょうか。
三浦から湯河原までが湘南?
直接のきっかけとなったのは、黒岩祐治神奈川県知事が中心となって進める「かながわシープロジェクト Feel SHONAN」という観光プロジェクトです。これは、2020年開催の東京オリンピックや14年度完成予定のさがみ縦貫道路の開通を前に、神奈川の「海」の魅力を世界に向けて発信するというもので、ここで同プロジェクトは今年10月、〈湯河原から三浦までの相模湾沿岸を「湘南」と呼びます!〉と宣言。つまり、三浦半島の先端の三浦から、横須賀、小田原、そして静岡県との県境に位置する湯河原まで、東京湾以外の神奈川県の海岸をすべて「湘南」と定義したのです。 これを受けてツイッターやフェイスブックを中心に異論が噴出。特に目立ったのは「三浦や小田原は湘南じゃない」という声です。ネット上では「湘南の範囲はどこまでだと思いますか?」というアンケートも行われ、その結果をみると、上位を占めたのは「茅ヶ崎~葉山」の34.9%をはじめ、「大磯~葉山」の26.2%、「藤沢・茅ヶ崎・寒川」の14.2%。その一方、「湯河原から三浦まで」「湘南ナンバーエリア」「神奈川県全部」などは軒並み数%から1%以下の低い支持率でした。一般的には「かながわシープロジェクト」が示した湘南の範囲は「広すぎる!」というわけです。アンケートのコメント欄にも「茅ヶ崎人的には、大磯から江ノ島の少し先までが湘南だと思う。湯河原や三浦は違うだろうと…」といった声が並びました。
90年代にも「湘南ナンバー」で論争
もっとも、「湘南はどこからどこまでか?」という論争は、最近始まったものではありません。「もともと『湘南』とは中国の地名です。中国の湖南省を流れる湘江という川の南部のことで、そこから借用して相模湾沿岸につけた地名にすぎず、日本古来の地名ではありません。それもあって、これまでも湘南の範囲をめぐっては度々論争になってきたのです」。そう話すのは、地名研究家の楠原佑介氏です。 実際、1990年代前半には「湘南ナンバー」の適用エリアに関して自治体間で論争になりました。また、2000年代はじめには、当時の平塚市長が主導し、藤沢市、茅ヶ崎市、寒川町、平塚市、大磯町、二宮町の3市3町を合併して人口97万人の政令指定都市「湘南市」にするという構想が話題になったこともありました。