「永遠のライバル」岡山vs.広島に雪解けをもたらした「県知事同士の友情」…47都道府県「知事の素顔」を調べてわかったこと
住民が直に票を投じて選ばれる知事は、まさに「現代の殿様」であり「日本の大統領」である。今回「週刊現代」は全国各地の知事にインタビューし、なぜ知事を目指したのかや、ふだんどんな仕事をしているのかを尋ねた。 【一覧】全国47都道府県「知事の素顔」…クルド人問題で注目の首都圏から見る 前編記事『【全国47都道府県・知事の素顔を大公開】そもそも「県知事」って何をする人なの?群馬、広島、静岡…本物の知事が明かす、その「頭の中」と「ひそかな野望」』より続く。
岡山vs.広島「冷戦」の雪解け
中国地方で最大の人口を誇る広島は、二番手・岡山県とあまり仲が良くないことで知られるが、ここにきて「雪解け」の気運が高まっている。岡山県の伊原木隆太知事が広島県の湯崎英彦知事の友人なのだ。 「湯崎くんとはスタンフォードで一緒でした。知事になってからも、広島とは喧嘩をしないと決めています(笑)」 伊原木知事は名家の生まれでもある。まもなく創業200年を迎える、岡山最大の百貨店・天満屋創業家の御曹司だ。 「でも『七光り』と言われるのが嫌で米国に留学して、そこで湯崎くんと知り合いました。 僕は、実家には恩はあるけれど、百貨店で一生働くつもりは正直あまりありませんでした。そんなとき、湯崎くんが広島県知事選に出ると言い出したんです。『簡単に勝てるもんじゃないだろ』と言ったんですが、彼は『出なかったら確率ゼロ%だ』ときかない。それで本当に勝ったんですから、心底感銘を受けましたね」 3年後、伊原木知事も出馬を決意。県で初の民間出身知事となった。 「昔は岡山と広島は『永遠のライバル』と言われていましたが、今では湯崎くんが旗振り役になって、瀬戸内海沿岸の県のPRを一緒にやるようになりました。時代は変わったんだなあ、と」
しがらみのない男
この瀬戸内海沿岸の県のうち、四国側の一角を占めるのが愛媛県だ。中村時広知事は、全国の知事の中でも旧弊にとらわれない「やんちゃ」な人柄で知られている。加計学園の獣医学部新設騒動で地元が揺れた際には、安倍政権に逆らうかのような発言で時の人となった。 「僕は昔、『消費税は必要だ!』と言って衆院選に出て、2回落ちたんです。親父は6回も落ちている(笑)。だから、しがらみがない。反安倍でもない。でも、うちの職員が嘘つき呼ばわりされたら、『おかしい』と言うしかないじゃないですか」 三菱商事を経て39歳で松山市長に当選、50歳で県知事となった。現在、県庁職員には「商社マンになったつもりで働いてください」と言い、県で初めて県産品などを直接セールスする「営業本部」を設置した。 「最初は『そんなの県の仕事じゃないでしょ』と言われましたし、みんな何をやっていいかもわからなかった。だから、まず僕が古巣の三菱商事や三井物産、伊藤忠といった商社をまわって交渉のお手本を見せたんです。 うちの職員は飲み込みも早いし能力も高い。やり方さえ覚えれば、あっという間です。おかげさまで初年度8億円だった売り上げが、今年度は283億円になりました」