夢にうなされ、下した死刑…元裁判員女性「情報なさすぎる」 制度開始15年
「あまりに死刑に関する情報がなさすぎる」 裁判員として死刑判決に関わり、死刑に関する情報公開などを求める要請書に署名した60代女性は、こう話す。死刑制度を巡っては今年2月に民間の有識者らによる懇話会が発足するなど、再び議論が活気を帯びており、要請書の提出も議論に一石を投じそうだ。 【時系列で見る】裁判員制度と死刑制度を巡る動き ■「無我夢中、考える余裕なかった」 女性がさいたま地裁で殺人事件の裁判員を務めたのは、平成24年2月のことだ。死刑判断も予想される事案。女性は判決前に夢でうなされたことを今も覚えているという。 女性の息子が法廷に立ち、女性が検察官席にいて、あちこちから「死刑」という言葉が聞こえる。「息子が死刑になってしまう」と思い、息子の名前を呼ぼうとしたが声が出ない。そんな内容だった。 被告の幼い子供の存在が頭をよぎることもあったが、判決は求刑通りの死刑。「当時は無我夢中。執行や死刑囚の処遇について考える余裕はなかった」と振り返る。 ■死刑執行で名前を確認するように 裁判員を務めてから10年以上。死刑執行のニュースを目にすると、自分が判決に関わった死刑囚かどうか、名前を確認するようになった。「執行する順番はどうやって決めているのだろう」といった疑問がわき、今回の要請書に署名した。 死刑制度を巡っては、平成22年に千葉景子法相(当時)が死刑を執行する東京拘置所の「刑場」を報道陣に公開。法務省内に勉強会を立ち上げたが、制度の存否について明言せずに終了した。 一方、今年に入り、日本弁護士連合会(日弁連)の呼びかけで2月、元検事総長、元警察庁長官、元日弁連会長らが名を連ねる「日本の死刑制度について考える懇話会」が発足し、今秋にも提言をまとめる方針だ。 懇話会発足に関し、小泉龍司法相は3月の記者会見で、死刑廃止は「適当ではない」とした上で議論の動向は「注視していきたい」としている。(滝口亜希)