生きる糧として「釣り」に着目 依存症からの回復 長崎ダルク25年 新たな生き方模索
薬物やアルコールなどさまざまな依存症を対象とした長崎市の回復支援施設「長崎ダルク」が1999年の開設から25年を迎えた。これまで、当事者同士の悩みの共有や社会参加の場を提供するなど、相談含め約2500人の回復を支援。依存の背景の一つに自己肯定感の低下があることを踏まえ、物心両面の「生きる糧」として新たに「釣り」に着目した就労支援に取り組む。 同施設はNPO法人ちゅーりっぷ会長崎ダルクが同市目覚町で運営。同市魚の町と佐世保市天満町にも相談室がある。スタッフは当事者や精神保健福祉士ら約10人。利用者約30人はグループホームで共同生活をしながら、当事者同士で体験を語り合うミーティングなどを通して悩みを共有して自分と向き合い、新たな生き方を模索していく。 代表理事の中川賀雅さん(53)によると、20、30代を中心に相談が増えているのがギャンブル依存。パチンコやスロットに加え、スマートフォンの普及に伴って公営ギャンブルなどが手軽にできるようになった。多くは借金など金銭問題を抱える形で表面化する。 中川さんは「ただ酒やギャンブルをやめさせようとしても何の解決にもならない。障害特性への周囲の理解不足など本人が抱える問題が背景にある」と強調。特に自己肯定感の低下を危惧する。就労継続支援の事業所に移行した精神疾患を抱える人が再び依存対象に手を出すケースも。「ここ(ダルク)にいれば『良き理解者、良き先輩』と認められても、移行先では『支援される側』。当事者が『支える側』として活動する場をつくれないか」。中川さんが着目したのが「釣り」だった。 同法人は社会貢献活動の一環で2年前、子どもたちが泊まり込みで釣りに行くイベントを企画。当事者も運営側として参加し、一緒に釣りや調理を楽しんだ。中川さんは「子どもは良い思い出ができ、当事者も自尊心の回復につながる相乗効果がある。釣りが生きる糧になる」と感じた。 同法人は昨年、漁船を購入。プロの釣り師でもあるスタッフの末永知也さん(41)を中心に、遊漁船事業の準備を進めており、早ければ年内の開始を目指す。当事者もスタッフとして就労。釣り客がいないときは自分たちで釣った魚を魚市場に出荷し、来年中には長崎市内に加工所の設置も計画する。 中川さんは「朝が苦手という人もいる。本人の特性に柔軟に対応できるような働く場をつくれたら」と前を見据える。 ■ ■ ■ 同法人は22日午後1時半から、長崎市福田本町の「ザ ヴィラズ長崎」で25周年を記念したトークイベントなどを開催。20日午後1時半からは佐世保市常盤町のまちなかコミュニティセンターで、NPO法人ダルク女性ハウスの上岡陽江代表を講師に招いたセミナーも開く。いずれも参加無料。問い合わせは長崎ダルク(電095・848・3422)。