どうしてそんなに株を嫌がるの?…“知らないまま”ではもったいない「日本国債」と「株式投資」のこと【経済評論家が解説】
多くの人が勘違い?「株式投資」の誤ったイメージ
――いくらなんでもバカって失礼だろう。まったく、なんなんだ。あの人は……。 僕は憤慨しながら家に帰りました。 家に帰り、個人向け国債というものを調べたら、たしかに、財務省のホームページに詳しい説明が書いてあった。金利が今は0.5%、元本保証と書いてある。 安全でメガバンクより金利がいいことはわかった。山崎先生の言ったとおりだ。 いままで、何の疑いもなく、10年以上、メガバンクに預けていたけど、たしかにすぐに使わないお金だったら、個人向け国債にしておいたほうが、よかったのかもしれない。 じゃあ、個人向け国債が、どのくらい増えるのか計算してみよう。 僕はパソコンを立ち上げて、エクセルで複利を計算することにした。すると、いまの金利が続いたとしたら、500万円分を買ったとしても、10年で25万円程度しか増えない。2倍になるには140年もかかる……。 これも山崎さんの言ったとおりだ。 たしか、山崎さんはお金を増やしたいなら、全世界株式のナントカがいいって言っていた。それをやればお金が増えるのだろうか。 いやいや。それは危険だ。株なんて危ないに決まっている。あの人も金融業界の人だ。金融業界の人を信用してはいけないって、あの人自身も言っていたし、それにあの人、人にバカとか平気で言うし……。なんか、妙に軽いときもあるし……。 思い出すと、なんだか腹が立ってきた。 よし。あの人の言うお金の増やし方というものを聞くだけ聞いて、買うかどうかは、そのあとに考えればいい。 それで今度は、山崎さんが何かおかしなことを言ったら、反論できるように、調べておこう。 言われっぱなしでは悔しい。 ――数日後 山崎先生:あれ、また来たの……。今日はどうしたの。 大橋:やっぱり、続きを教えていただけますか。 山崎先生:個人向け国債だけじゃ、たいしてお金が増えないことがわかったのかな? 大橋:はい。家に帰って調べたら、個人向け国債はちゃんとしたものでした。ただ、エクセルを駆使して計算したら、個人向け国債の金利0.5%だと、僕の大切な貯金500万円が2倍の1,000万になるのは、約140年もかかることがわかりました。残念ながら僕は生きてません……。 山崎先生:個人向け国債でたいして増えないことがわかったなら、わたしがオススメした世界株のインデックスファンドで株式投資をして、5%で運用することを目指せばいいじゃない。 大橋:でも、先生……。世界株のインデックスファンドなんて言われたってなんのことだかわからないし、そもそも、それだって株なんですよね……。 山崎先生:そうだよ。 大橋:先生。株はいやです……。 山崎先生:どうしてそんなに株を嫌がるの? 大橋:だって、減るかもしれないんですよね。それに、先生と違って、経済のこととか詳しくないんですし、経済のニュースを見てもよくわからないです。日中は仕事してるから、株式取引やってる暇がないんですよ。しかも素人がやると、プロにカモにされるってよく聞くし……。 山崎先生:ちなみに君さ、株式投資っていうと、どういうの想像するの? 大橋:投資ですか……。1日中パソコンの前にいなければならない感じです。 山崎先生:あのね、これは投資じゃなくてトレーディングといって、言わば、マニア向けの特殊なゲームなの。ゲームだから取ったり取られたりで、こうやって頑張れば儲かるようになるというものではないしね。 大橋:じゃあ、僕はどうしたらいいんですか。株がいいって言ったじゃないですか! 山崎先生:君の場合、実際にやるのは、これから説明する株式の投資信託だけで充分。それ以外の仮想通貨やFX、金(ゴールド)などの投資は、やらないと覚えておけばいい。これならシンプルだし、普通にやればだいたいの人がうまくいくと思うよ。 大橋:はあ……。 山崎先生:それに投資信託は一度、やり方を決めて投資してしまえば、ずっとほったらかしにしていればいいから、手間がかからない。君みたいに日中に仕事をしている人にも合うの。一日中、画面を見ているのなんて、仕事してたらできないし、ずっとお金のこと考えてるなんて、人生がもったいない。頑張るのは本業だけで十分だよ(図表3) まとめ ・パソコンの前に座って値動きを見ているようなデートレーダーの投資はマニア向けのゲームと言うべき特殊な世界である。 ・株式の投資信託だけをやる。仮想通貨やFXなど、それ以外の金融商品は手を出さない。 山崎 元 経済評論家 大橋 弘祐 作家/編集者