「ちょっとだけ心が削られて…」話題の《意地悪ベンチ》に専門家が危機感をつのらせる納得すぎる理由
「世の中ではバリアフリーとかSDGsとか聞こえのいい言葉が盛んに言われるのに、実はおもいきり排他的なんです」
3月中旬、新宿区の公園のアーチ状のベンチがSNSに投稿されると、「横になって寝させないためか」「ホームレス対策か」「お年寄りや子どもには危険」「誰にとっても座りにくい」「弁当や飲み物も置けない」といった批判が噴出。 【現場写真】小さな固いベンチが…所持金8円…渋谷区のバス停で殴り殺された女性が最後に見たもの 「排除ベンチ」「意地悪ベンチ」という指摘も続出していたが、それに対して新宿区の吉住健一区長は「ホームレス対策ではなく住宅地における夜間の騒音防止です 地元からの苦情はありません」と投稿。 さらに、新宿区内の様々な座りにくそうなベンチの画像をアップするなど、挑発的な投稿を繰り返していた。 では、実際にはどういった目的で設置されたベンチなのか。新宿区は「座りにくい」「意地悪」「排除」といった批判をどう受け止めているのか。新宿区みどり土木部みどり公園課長・小菅健嗣氏が回答をくれた。 ◆その公園の環境により使い分けられているベンチの形状 まず、アーチ状のベンチ設置の目的については、住宅地に隣接した小規模の公園が多く、地域住民の生活に密着しているという特徴があるとして、こう説明する。 「区は、公園を訪れる皆さまに気持ちよく適切にご利用いただき、地域住民の方々が平穏な日常生活を送っていただくことが大切と考えています。 しかしながら、区内の公園においては、立地によって、周辺の繁華街から流れてくる利用者が、夜間から早朝にかけて長時間にわたり園内で飲酒し大声で騒ぐ、ゴミを散乱し放置する等の不適切な利用が散見されることから、区では地域の実情に合わせ、設置する施設の形状を工夫するなどの対応をしているところです。 ご指摘のさつき児童遊園のアーチ状のベンチは、腰を掛けて座ることができる一方で、こうした長時間の利用を抑止するために、平成8年1月に設置しました」(新宿区みどり土木部みどり公園課長・小菅健嗣氏 以下同) 新宿区立公園では、類似のベンチは件のさつき児童遊園のほか、4ヵ所の公園に計10基が設置されている。新宿区独自のものではなく、他の自治体でも設置されているそうだ。また、このベンチについては、「誰にとっても利用しやすいベンチを設置すべき」という意見がある一方、「ベンチの形状はとても良い」という意見もあるという。 「区としては、利用者の方々のご意見を踏まえて公園づくりを進めることが重要と捉えていますが、その一方で、地域住民の方々の住環境を維持することも大切と考えています。 こうした理由から、アーチ状ベンチを設置していること、また、今後もこうした不適切な利用を抑止する観点から、現時点では形状を変更する予定はありません。 また、区では、新宿中央公園のように大きな面積で住宅に隣接しない公園については、背もたれがあり、ゆったり座ることができるベンチを設置しています。 今後は、公園の利用状況及び地域の要望などを踏まえ、様々なご意見があることも参考にしながら、ベンチの形状等を検討してまいります」 ちなみに、アーチ状のベンチの設置は、ホームレス対策ではなく、「ホームレスについては、自立支援センター等の職員と連携して対応しており、巡回や声掛けを行い、福祉相談や施設入所などをご案内することにより自立に向けた取り組みを行っています」と補足する。