「限界です!!」老老介護の実態…介護中の妻を殺害した男に執行猶予付き判決 裁判長涙ながらの判決「悩み抜いた結論」 東京地裁
“生きる権利を奪ってしまった”男が語る後悔
事件から約9カ月。吉田被告は今何を思っているのだろうか。被告人質問では次のように答えた。 弁護士: 節子さんに対してどのように思っている? 吉田被告: 本人は一生懸命に生きようと思って薬も欠かさず飲んでいたのに私が生きる権利を奪って申し訳ない。節子は今怒っていると思います。 弁護士: 事件の根本的な原因は何だと考えている? 吉田被告: 私自身が古いかもしれませんが、自分の家のことは自分で片付けないといけない、人に弱みを見せてはいけないと考えてしまったことです。 弁護士: 今何か言いたいことはある? 吉田被告: 節子は昔から他人様から言われていたが、しっかりもので、きちょうめんで、仕事的にも家庭的にも強い人だとみられていたが、ここ2、3年の節子を見ていると本当は私に甘えたかったのではないかなと。それが出来なくて申し訳ないです。
「悩み抜いた」裁判所の判断は執行猶予
この事件は、“老老介護の介護疲れ”による殺人事件だと報道されている。ただ、検察側は吉田被告自身が介護をストレスとは思っていなかったこと、節子さんも吉田被告の手助けを受けてはいたがある程度身の回りのことはできていたことなどを指摘し、“介護疲れによる殺人”と見るべきではないと主張。節子さんが騒いだり、なだめても収まらないといった言動に「頭に血が上り、カッとなった」ことで殺害に及んだとして懲役7年を求刑した。 一方、弁護側は、介護によるストレスを自覚していなかったにせよ、肉体的・精神的に疲労していたこと、介護サービスを受けることを節子さんが拒否をしていたことなどを踏まえ、 “介護”が事件の背景にあり、犯行に至る経緯に酌むべき事情があるとして執行猶予付きの判決を求めた。 20日、裁判員らが出した答えは懲役3年、執行猶予5年の判決だった。 東京地裁は判決で、「吉田被告自身、ストレスを感じていなかったと述べているが、その経緯をつぶさに見ると、家族のことで他人に負担をかけさせられないとの思いや、自らの見栄などから介助を背負い、自覚のないまま疲労や疲弊感を蓄積させていたことは容易に推認できる」と指摘。その上で「実刑を選択することも考え得るところであるが、吉田被告の置かれていた状況や事件までの経緯を考慮すると、刑務所に直ちに収容することのみが刑事責任を問う唯一の手段とまでみることはできない」「その余生において、反省を深め、被害者を弔い続けるべきものとすることが適当」として執行猶予付きの判決を言い渡した。 そして裁判長は判決を言い渡した後、「結果が大変重いということは何回も強調したいと思います。私達は悩み抜いた上でこの結論にたどり着きました」と震える声で涙ながらに諭していた。