『366日』『くるり』『9ボーダー』『アンメット』全く異なる記憶喪失ドラマの過去と現在…重要なのは
今年の春ドラマは、主人公あるいはその身近な人物が記憶喪失という設定のドラマが多かった。今回はその中で、記憶喪失と恋愛が絡んだ『366日』(フジテレビ系、月曜21時)、『くるり~誰が私と恋をした?~』(TBS系、火曜22時)、『9ボーダー』(TBS系、金曜22時)、『アンメット ある脳外科医の日記』(カンテレ・フジ系、月曜22時)の4作品における、過去と現在の比重を振り返りたい(以下、ネタバレを含む)。 【関連画像】2024年の春ドラマ、”記憶喪失がテーマ”それぞれのハッピーエンド 『366日』では、圧倒的に過去が重視されていた。広瀬アリス演じる主人公・雪平明日香は、水野遥斗(眞栄田郷敦)と高校時代から両想いで、彼が記憶喪失となる直前に交際がスタートしていた。事故で記憶を失った遥斗は、明日香を忘れてしまう。だが、明日香は遥斗が記憶を取り戻すように、同級生と共に懸命に過去の出来事を共有する。作中では繰り返し、高校時代の回想が描かれ、美しかった思い出の中の遥斗を取り戻そうとする。 遥斗は、以前のように生活が出来ず記憶が無い状態でも、献身的に支える明日香に、あらためて恋をする。最終話で、昔の自分に戻ることにこだわる遥斗が、主治医から「過去よりも…今じゃない?」と提示されるまで、『366日』では過去が重要視されてきた。結果的に、遥斗は記憶を取り戻し、明日香と結ばれ家族となる。明日香の強い想いが実った形だ。 『くるり』では対照的に、現在が尊重された。生見愛瑠演じる主人公・緒方まことも、遥斗同様、事故で記憶喪失となった。まことは職場などで聞かされる“過去の自分”に幻滅する。何事にも当たり障りなく、つまらない自分だったのだ。そこに自称・元カレ、自称・男友達、自称・運命の相手だという3人の男性が現われ、“過去の自分”が渡そうとしていた指輪は誰への贈り物だったかが、物語の最大の謎になる。 記憶を失ったけれど、新しい自分に生まれ変わろうとするまことは、3人と交流を重ねる中で、自称・元カレの西公太郎(瀬戸康史)と恋に落ちる。もし記憶を取り戻した時に、“過去の自分”が選んだ男性と、“現在の自分”が選ぶ男性が異なった場合、苦しむことになるのではないかと思い悩んだまことだが、結果的にそれは同じ公太郎だった。 何度か、公太郎が不穏な表情を見せるミスリードもあり、現在見えている景色が“くるり”と変わってしまったら、という不安も抱かせたこのラブコメミステリー。だが、現在に重きを置きつつも、“過去の自分”とも矛盾しない選択で、見事なハッピーエンドとなった。