『北の国から』『鉄道員』の聖地も営業終了。「根室本線」の廃止区間を巡ってみた
東鹿越駅
金山駅を過ぎると、列車は大きな人造湖かなやま湖に沿って終点の東鹿越駅(南富良野町)を目指す。ちなみに真冬の時期は湖が厚い氷で覆われ、沿線の車窓の中でも見どころとなっている。 湖畔に建つこの駅は、戦時中近くの石灰石鉱山からの運搬用に根室本線と分岐する信号場が設けられ、仮乗降場を経て1946年に正式な駅に昇格。しかし、11~15年の1日の平均乗車人数は1人以下。当初は17年3月で廃止となる可能性もあったが、16年8月の台風で同駅から先の区間が不通となったことで列車と代行バスの発着駅という重要な存在となった。 駅周辺には何もないため、下車する乗客は基本的に全員が代行バスに乗車。休日や平日昼間だと鉄道ファンばかりだが、この日は平日朝の始発便だったので途中にある高校に通う学生の姿も。鉄道ファンの利用しかない路線だと思い込んでいたが、地元の人にとっても貴重な足になっていたことを改めて知った。
幾寅駅
代行バスは8分ほどで最初の幾度駅(南富良野町)に到着。ここは高倉健晩年の代表作『鉄道員』(99年公開)の舞台となった駅で、昔ながらの木造の駅舎には劇中で使われた“幌舞駅”の看板がそのまま残されている。 駅構内の待合室以外の部分は「ロケーション記念展示コーナー」として撮影で実際に使用された駅事務室のセットが当時のまま保存されており、ほかにも撮影で使用された衣装や小道具、出演者たちの直筆サインなどが飾られている。 列車が来なくなって久しいので線路は雪でまったく見えなかったが、雪が舞う中ホームに立てば気分は健さん。幾寅駅を訪れる前、久々に鉄道員を観たこともあり、テンションが上がってしまった。
落合駅
そして、廃止区間でもっとも新得寄りに位置する最後の駅が落合駅(南富良野町)。この先には北海道でも有数の峠として知られる狩勝峠があり、もともとはそれを越えるために機関車が多く配置されていた根室本線の重要駅だった。 不通になった16年以降は、ホームや跨線橋などへの立ち入りは禁止(※待合室のみ利用可)。だが、駅前からでも外観は十分に堪能できるので特に問題はなさそうだ。 調べたところ、この駅は00年に日本でヒット曲を連発した韓国人女性歌手BoAの代表曲『メリクリ』のPV撮影に使われた場所らしい。後で映像を見たが、できれば列車が運行している頃にもう一度来たかったものだ。 ===== 以上の根室本線の廃止区間の7駅は、列車と代行バスが運行される31日まで訪問可能。列車だけで一度に複数の駅を訪れるのは難しいが、旭川―帯広を結ぶ都市間バスのノースライナーやふらののバス西達布線、占冠村村営バスを上手く活用することで効率よく回ることができる。 春休みを利用して、まだ雪深い北海道のローカル線と駅に最後の別れを告げるのもいいかもしれない。 <TEXT/高島昌俊> 【高島昌俊】 フリーライター。鉄道や飛行機をはじめ、旅モノ全般に広く精通。3度の世界一周経験を持ち、これまで訪問した国は50か国以上。現在は東京と北海道で二拠点生活を送る。
日刊SPA!