『WORLD ORDER』須藤元気、音楽活動は高校時代からの夢
国内の反応は「須藤元気はどこに向かうのか」
『WORLD ORDER』の標準を国内ではなく“世界”にしたのには、もう1つの理由がある。グループ立ち上げ当時、格闘家としての高い知名度が”足かせ”となり、日本でのリアクションは意に反したものばかりだった。 「誰もが『この人、迷っている』的な反応ばかりで、ネット上でも“須藤元気はどこに向かっているのか?”と書かれました。だからあえて自分からも『WORLD ORDERをやっています』とは言わなかった。『今何をしているの?』と聞かれたら『レスリング部の監督です』と答えていましたからね」と、日本国内でのイメージ戦略には苦戦を強いられる。 「別業種の人間が音楽をやろうとすると、実力はどうあれ、どうしても“やっちゃった感”が出てしまい、世間は受け入れてくれない。パブリックイメージが邪魔をする」と、格闘家・須藤元気がミュージシャンとして受け入れられるには、容易ではなかった。 しかし、それら反応に対し須藤は「理解されることは、すでに誰かがやっていること。それに新しさなどはない。理解されないことは逆にチャンス」と、ポジティブに受け止める。格闘家を夢見た時も似たような経験があり「中学時代に『テレビで格闘技が放送される時代が必ず来る』と言って格闘家を目指した時、周囲の誰も理解を示してはくれなかった」と回想する。それから数年の後に格闘技ブームが日本を席巻。その目論見が当たったことへの自信が『WORLD ORDER』で勝負するという柱にもなった。
西洋のマネではなく日本らしさで世界と勝負する
海外で修行を積んで日本デビューした、“逆輸入ファイター”としての格闘家時代の成功経験も役に立った。 「西洋のマネをしたら世界に受け入れられない事はわかっていたので、いかに日本らしさを打ち出すか。ドメスティックなものを前面に押し出せば、それが世界に通用するものに変化する。サラリーマンスタイルで踊るなんて、僕ら以外いない。長生きする秘訣は、替えが効かないものをやること」と実感を込める。 2011年にアメリカで行われたマイクロソフト主催のイベント参加をきっかけに、『WORLD ORDER』は、再び“逆輸入”される形で、日本でも大きくその存在が報じられた。 結成から今年で5年。今では『WORLD ORDER』をやっている、と胸を張って言えるようになった。「これまでの道のりは、自分自身がイメージした通り。それは僕だけではなくて、メンバーがついて来てくれたおかげでもある。格闘技という個人競技をやって来ただけあって、立ち上げ当初は”自分が自分が”という部分もあったけれど、今はメンバー7人全員で一つという気持ちが強い。 毎瞬毎秒が楽しいので、これからもいい形になっていくだろうし、海外からのオファーも多いので、どんどん外に出ていきたい」と、グループの更なる可能性に含みを持たせた。 (取材・文/石井隼人) ■須藤元気(すどう・げんき) 1978年3月8日、東京都出身。格闘家引退後、独自の音楽表現と身体表現で魅了する空前絶後のパフォーマンユニット『WORLD ORDER』(現メンバー:須藤元気、落合将人、内山隼人、森澤祐介、高橋昭博、上西隆史、富田竜太)を結成。12月17日には、2年半ぶりとなる3rdアルバム『HAVE A NICE DAY』をリリースする。初回限定版には2014年1月から2月にかけて東京、大阪、札幌、名古屋、福岡で行われたZeppツアーのロードムービーが収録されている。