ネットのフェイク情報に踊らされるテレビ業界 リサーチは“裏取り”が命
5月28日放送のフジテレビ系「ワイドナショー」で、アニメ監督・宮崎駿氏の引退をめぐる過去の発言に関して、誤った内容を放送してしまったフジテレビ。 今月には、6日放送の同局「ノンストップ!」が、人気氷菓「ガリガリ君」で実在しない味を紹介し謝罪をした。 同局は「インターネット上(=ネットに投稿されたガリガリ君の)にあった画像をそのまま使ってしまった」と番組制作過程でのミスと説明している。
ADや放送作家見習いがリサーチを担当
真偽を確かめずに放送してしまうとは何ともお粗末だが、じつはフジテレビに限らずテレビ業界ではこうしたケースはままあるという。 番組制作会社のスタッフは語る。 「テレビ番組には通常“リサーチャー”という調査専門のスタッフがいますが、予算の少ない番組は彼らを雇う余裕がない。代わりにADや放送作家見習いといった若いスタッフがリサーチをしています。彼らはネットからネタを拾ってくることが多い。普通そこから真偽の程を関係先に連絡にして確かめます。もちろん、画像や映像を使用する場合は使用許可を取らなければならないわけです」 だが、リサーチのプロではない者が担当する弊害もあるようで、 「真偽を確かめようとしても関係先がつかまらなかったり、なかなか画像や映像の使用許可が下りないこともあります。ADなんかだと、日々別の仕事にも追われていますし、きちんとした確認や許可がとれていないうちに収録日や放送日を迎えてしまうなんてこともあります」(同番組制作会社スタッフ) こうした場合、番組の責任を負う立場のプロデューサーやチーフディレクターが、最終的なチェックはしておくものだとも思うが、意思の疎通が十分でなかったのだろうか。
調査のプロ“リサーチャー”の仕事術!
“嘘ニュース”などネットにフェイク情報があふれる昨今において、実際にリサーチャーはどうやって貴重な情報を集めているのだろうか? 「番組の会議で調べて欲しいことがリクエストされます。ジャンルによってアプローチの仕方は違ってきますが、書店に並ぶ書籍や雑誌をはじめ、国会図書館や大宅壮一文庫などにも足を運び古い資料をあたります。関係者への取材はもちろん、普段から番組に使えるネタはないかアンテナを張り巡らせながら街を歩きます。ある程度、経験を積んでくると、それまで調べてきたデータや人脈が役立って、仕事がスムーズにいくようになります」(30代の男性リサーチャー)。 そうしたプロから見ると、便利である反面、ネットからの情報は危険だという。 「確かにネットは手軽に情報を得るのは便利ですが、出典が不明だったり、本当か嘘か分からないことがあったりします。我々もネットの情報を取っ掛かりにさらに深堀りしていくことはありますが、そのまま利用することはない。どんな情報でも“裏”を取っておかないと、後で信用問題になってしまいます」(前出のリサーチャー)。