多種多様なトラックを作るのは架装メーカーの仕事! 自動車メーカーが基本的にシャシーしか手がけない理由とは
トラックの多様化とともに分業が進んだ
トラックという車両は、荷物を運ぶという用途がメインだが、運ぶモノや目的によって最適な形状のボディがある。重い荷物を運ぶなら平ボディという荷台に屋根のないシンプルな荷台でこと足りる。ボディはそのぶん軽くできるので、車両総重量に占める積載重量が多く、安く頑丈なのでコスト面でも有利だ。 【画像】荷物を積み下ろしするときにはボディのサイドがガバッと開くウイングボディ しかし、雨に濡れては困る段ボールなどの荷物は、平ボディでは荷崩れしやすく積める限界が低い。そのため、箱ボディとも呼ばれるドライバンのボディが使われるのだ。 さらに、生鮮食品や冷凍食品を運ぶトラックは、庫内を冷凍、冷蔵状態にできる冷凍車/冷蔵車などの断熱仕様、冷凍機搭載などの機能を盛り込んで高品質な輸送を実現できるようにしている。フォークリフトで一気に積み下ろしできるようボディ側面がガバッと開くウイングボディも、日本発祥の構造だ。 重量のある荷物をトラック単体で積み下ろしできるユニック車もさまざまな場所で活躍するが、よく見れば仕様はいろいろあって、細部の構造が違っていたりする。 液体を運ぶのはタンクローリーだし、粉状/粒状の原料を運ぶバルクトラックなど、運ぶモノによって最適なボディは本当にさまざま。さらには消防車やコンクリートミキサー車、レッカー車などは設計や生産に独自のノウハウや技術が必要となる。 一見、それほど差がないように思えるようなキャリアカーやダンプ車なども、実際にはオーダーによって細かな仕様が決定することが多いため、同じ仕様はほとんど存在しないワンオフ仕様を請け負うことも架装メーカーには多いのだ。 このような多種多様なボディの製作を自動車メーカーが請け負っては、仕事が複雑過ぎて効率が悪くなってしまう。そこでトラックメーカーはシャシーまでをつくり、それ以降の各仕様変更については架装メーカーがボディをつくる分業性が確立されたのだ。 当初は板金塗装業と同じく職人の腕頼りだったことから、平ボディやシャシーの状態から目的に応じたボディをつくり上げていたのだろう。それが発展して、いまの業界が確立されたという流れ。 1970~80年代と経済が安定して発展してきたなかで、トラックの使われ方が多様化、多機能化していくに連れて、ますます分業化が進められていった。そうなると、架装メーカーのなかでも特定の分野に強みを発揮するところも現れてくる。その構造を実現するために必要な技術をあらかじめ有していたり、努力して技術を確立させると、そうした強みのあるメーカーに注文が集中することになるから、自然とそんな得意分野が出来上がるのだ。 それでも最近は冷凍車やウイングボディなど需要の多い特装車はトラックメーカー内で完成車を生産するなど、効率化を図って車両価格を抑える工夫も図られている。 架装メーカーは、同業者だけでなくトラックメーカーも一部ライバル化してしまったから、つねに新しい機能や構造をもったボディの開発にも力を入れている。日本人の真面目さ、きめ細かさがボディのつくりにも現れるから、乗用車と違った意味で、輸入車と国産車を見比べるのも面白いものだ。
トラック魂編集部