「トランプ以前のトランプ」がここにきて「戦争終結」に向けて動き始めた…! ロシアが悪いのは当然だが…「ウクライナの応援歌」を合唱している日本は「情勢」を見誤りかねない
EUは猛反発
ハンガリーのオルバン・ヴィクトル首相がウクライナの停戦を目指して、ロシアや中国を電撃訪問した。欧州連合(EU)は猛反発しているが、欧州各国でも「ウクライナは早くロシアと停戦すべきだ」という声が強まっている。オルバン氏に成算はあるのか。 【写真】大胆な水着姿に全米騒然…トランプ前大統領の「娘の美貌」がヤバすぎる! オルバン首相は7月5日、モスクワを訪問し、ウラジーミル・プーチン大統領と会談した。直前の2日には、キーウを訪問し、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領と会談していた。かと思えば、8日には北京に飛んで、習近平総書記(国家主席)と会談した。いずれも、事前に公表しない電撃訪問だった。 テーマは、ウクライナの停戦である。 オルバン氏はEUのなかで、ただ1人、プーチン大統領と親しい関係を築き、EUのウクライナ支援とロシアに対する経済制裁に反対してきた。ハンガリーは7月1日から半年間、輪番制のEU議長国に就いている。一連の訪問は議長国の立場を活かして、さっそく停戦の仲介に動き出した形だ。 EUは、一貫してロシア寄りの姿勢を示してきたオルバン氏に強い不満を抱いていた。今回のロシア訪問についても、シャルル・ミシェル欧州理事会議長は「EU議長国という立場で、EUを代表してロシアと交渉する権限はない。ウクライナなくして、ウクライナの議論もない」と批判した。 ウクライナとの協議について、具体的な中身は明らかになっていないが、オルバン氏は声明で「私はゼレンスキー大統領に、平和交渉を加速させるために速やかな戦闘停止が可能かどうか、検討するよう求めた」と語っている。
プーチンと習近平は歓迎
同氏は記者団に「なぜキーウを訪問したかと言えば、平和はウクライナだけでなく欧州全体にとって重要だからだ。この戦争は欧州の安全保障に大きな影響を与えている」と語った。一方、ゼレンスキー氏は「すべての欧州の隣人たちの支援が重要だ」と語るにとどまっている。 プーチン氏や習近平氏は、もちろんオルバン氏の動きを歓迎している。 プーチン氏はオルバン氏に対して「ウクライナ紛争を終わらせるために、和平提案の微妙な問題(nuances)について協議する用意がある。私は2国間の関係について意見交換し、欧州危機の見通しについて議論するつもりだ」と語った。 習氏も「国際社会は双方が直接対話し、交渉する条件を作り出すべきだ。それは早期の戦闘停止を通じて政治的解決を目指す、すべての当事者の利益になる」と語っている。 プーチン氏は6月14日、ロシア外務省での会合で、ウクライナとの停戦について「クリミア半島と東部4州からのウクライナ軍の撤退」「ロシアに対する経済制裁の撤回」「将来にわたるウクライナの北大西洋条約機構(NATO)加盟断念」という3つの条件を示した。 オルバン氏が、当事者たちに、どんな提案をしているのか、あるいは、するつもりなのか、分からないが、これまでの姿勢からみて、ウクライナに「クリミア半島と東部4州の放棄を促す」のは確実とみていい。 先週7月5日配信コラムで紹介したように、米国のドナルド・トランプ前大統領も同じ考えだ。それだけでなく、リアリズム(現実主義)の立場に立つ国際関係論の大御所であるシカゴ大学のジョン・ミアシャイマー教授も、かねて同様の提案をしてきた。 いまや、クリミア半島と東部4州の放棄案は、トランプ氏やミアシャイマー氏が机上のプランとして語るだけでなく、オルバン氏の精力的な仲介工作によって「現実の政策」として動き出す可能性が出てきたのではないか。
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