中野信子 理想と実際の自分が一致する人ほど周囲から好かれるのは「当たり前」だった…「しあわせのものさし」で運は自分のものにできる
◆自己一致の状態 ではなぜこのことが、運に結びつくのでしょうか。 実は、「しあわせのものさし」にも人を呼び寄せる力があるのです。 人間の脳の中には、「快感」を生む報酬系という回路があります。これは、脳の中で比較的奥のほうにある回路で、外側視床下部、視床、内側前脳束、腹側中脳、尾状核といった、快感を生み出すのにかかわる部分の総称です。この部分が刺激されると人は快感を覚えます。食欲や性欲など本能的な欲求だけでなく、人助けなど社会的な行動も含め「自分が気持ちよい行動」をとると活動する部分です。 自分が心地よい、気持ちよいと思える状態を積極的につくり出している人は、常にこの報酬系を刺激していることになります。自分の報酬系を上手に操れる人は、自分のいまある状態にとても満足できる人である、ということもいえるでしょう。 人がもっともしあわせを感じるのは、自分が心地よいと思える状態に心底ひたっているとき、といえます。「もっとああしたい」「もっとこうなったらいいのに」という欲を忘れ、「ああ、気分がいいな」「気持ちがいいな」としか感じない瞬間です。その瞬間には、「ああ、もう何もいらないな」とさえ思えます。 つまり、常に快の状態をつくり出す努力をしている人(報酬系を刺激している人)というのは、心理学でいう自己一致の状態になるのです。
◆人をひきつける力 自己一致の状態とは、こうなったらいい、こうあるべきと考えている理想の自分と実際の自分が一致していること、あるがままの自分を自分で受け入れていること、もっと簡単にいえば、自分で自分のことが好きな状態です。 もっと頭がよければいいのに、もっと仕事がうまくできればいいのに、もっとスタイルがよければいいのに、などといった欲をもっていない、私はいまのままの私でいいんだ、と自分で認めている状態です。 この自己一致の状態にある人は、人をひきつける力があります。 「もっとこうしたい」「もっとああしたい」といった、ある意味攻めの姿勢がまったくないので、一緒にいる人はとても楽なのです。また、常に快の状態でいるので、一緒にいる人も快くなってくる。 さらに、自己一致の状態にある人は、人の話を素直に聞けるという特徴もあります。話している側の心が多少波立っても、それを吸収してしまう余裕ももっています。 こういう人が他人に好かれないわけはありません。 つまり、運がいい人というのは、自分なりの「しあわせのものさし」をもっている→そのしあわせの状態を積極的につくり出す努力をしている→自己一致の状態(自分を好きな状態)になる人に好かれる、という図式が成り立ちます。 ※本稿は、『新版 科学がつきとめた「運のいい人」』(サンマーク出版)の一部を再編集したものです。
中野信子
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