10年も輸入車トップを堅守! 日本でメルセデス・ベンツが売れるワケ
輸入車ナンバー1メーカーの座に君臨するメルセデス・ベンツ
輸入車の年間販売ランキングのトップは、2014年までほぼ一貫してVW(フォルクスワーゲン)であった。この流れが大きく変わったのは、北米で2015年に発覚したVWのディーゼル規制に関する不正問題以降だ。 【画像】メルセデス・ベンツが生んだ最強の働くクルマ「ウニモグ」の画像を見る 当時、VWのディーゼル車は日本に輸入されておらず、直接の当事者ではなかった。しかし、VWの2015年10月における国内販売台数は、前年の52%まで急落した。VWの日本におけるブランドイメージは、品行方正で優等生的だったから、多くのユーザーが信頼を裏切られた気分になったのだ。その結果、売れ行きも半減した。 そして2015年から、輸入車年間販売ランキングは、メルセデス・ベンツが1位を保つようになった。2位については、海外メーカーでは年によってVWとBMWが入れ替わったが、1位は一貫してメルセデス・ベンツだ。 この背景には、大きくわけてふたつの理由がある。ひとつはメルセデス・ベンツの販売が堅調なこと。ふたつ目は、VWの売れ行きがディーゼルの不正問題をきっかけに下降傾向を強めたことだ。 メルセデス・ベンツが好調な背景には、商品の充実がある。とくにコンパクトSUVのGLAとGLB、ミドルサイズSUVのGLCは、VWのディーゼル規制に関する不正問題が発覚した2015年ごろから輸入を積極的に開始した。VWの衰退とほぼ同時に、SUVの高人気に乗ってメルセデス・ベンツがこのカテゴリーの取り扱い車種を増やしたから、ブランド全体の売れ行きも急増した。まさにタイムリーな戦略であった。
ディーゼルの充実とGクラスの存在
また、メルセデス・ベンツは、これらのコンパクト/ミドルサイズSUVに、クリーンディーゼルターボを積極的に搭載して価格は割安に抑えた。日本車では、2010年代に入るとハイブリッド車を急増させたが、ディーゼルを豊富に用意したのはマツダのみだ。メルセデス・ベンツにはディーゼルが多く、実用回転域の余裕ある駆動力により、SUVとの親和性も高い。SUVとディーゼルの組み合わせが新しいメルセデス・ベンツの魅力になり、売れ行きも増えた。 また、近年は輸入車、日本車ともにSUVが増えたが、その多くはメルセデス・ベンツならGLAやGLB、日本車ではハリアーやヤリスクロスなど、乗用車のプラットフォームを使ったシティ派SUVだ。これらが膨大に増えた結果、一種の反動で、SUVの原点とされる悪路向けのランドクルーザーやジムニーが注目されている。 このニーズに沿って高い人気を得たのが、悪路向けSUVのメルセデス・ベンツGクラスだ。価格が1000万円以上の高価格車だが、2023年の輸入車/車名別販売ランキングで11位に入った。BMW2シリーズやVWポロよりも、Gクラスが多く販売されたのだ。 以上のように、多岐にわたる理由によってメルセデス・ベンツの販売は好調だ。昔はセダンの上質なクルマ造りがメルセデス・ベンツの魅力だったが、いまは違う。存在感の強いフロントマスクと、それを助長するSUVの豊富なラインアップによって売れ行きを伸ばす。販売の増加に伴って、メルセデス・ベンツのブランドイメージも大きく変化してきた。
渡辺陽一郎