AIが進化すると、予報官や気象予報士はいなくなる? 気象庁と民間気象会社の答えは「ノー」、その理由とは
「私の経験上、AIで2~3割くらいは精度が良くなっている」。予報精度に定評のある民間気象会社「ウェザーニューズ」(千葉市)予報センターのチームリーダー坂本晃平さんは、そう話す。 ウェザー社も積極的にAIを利用してきた。雨雲の予測の範囲を5キロ四方から250メートル四方に細かくすることなど、既に深層学習を導入した事例もある ただ、気象庁と同様に情報を出すときは最終的に人の目でチェックする。今後もAIが気象予報士に完全に取って代わるとは想定しておらず、むしろ、気象予報士がAIを使う側だとする。 例えば、気圧配置の解説。経験のある気象予報士であれば、同じような気圧配置が「いつ」「どんな災害につながったか」、頭の中に蓄積があり説明できるが、若い気象予報士には難しい場合がある。ウェザー社では、AIに過去の気圧配置を学習させ、同じような配置を探せるようにしたことで、経験の浅い気象予報士でも過去の事例を参考にしやすくなった。
「ウェザー社には気象予報士がたくさんいる。その膨大な経験則から新しいAIの使い道を発見でき、善しあしも判断できる」。テクニカルディレクターの西祐一郎さんはAIとの共存に自信を見せる。 ▽一人一人の天気予報 ウェザー社の売りは、気象庁がサービスしきれないきめ細かい情報の提供だ。 「『何着たらいいですか?』。その答えは、寒がりもいれば、暑がりもいるので人によって違う。さすがに予報士が一人一人にコメントするのは不可能。生成AIを使えば今後、個々に対応したサービスを提供できる可能性がある」。西さんは、AIで個人個人や会社ごとのニーズに合った予報が実現できるのではないかと考えている。 今日は大阪出張、天気はどう? 「新大阪駅に着いて30分後くらいに小雨が降り、気温も下がります。あなたは寒がりだから1枚羽織るものを持っていった方がいいかもしれません」。 AIとうまく共存すれば、そんな天気予報の未来が待っているかもしれない。