不老長寿の秘訣は、生魚の栄養!卑弥呼が食べた「生菜(せいさい)」を再現
毎日元気に過ごすために、全体に欠かせないことの1つが食事! 古代のミステリアスな女性・卑弥呼も、日々食事をとっていました。「教科書に登場する“あの”偉人はどんなご飯を食べていたんだろう?」という疑問を、彼らの好きだった食べ物からひも解いていきます。 「歴史は苦手!でも料理や食べることは大好き!」というキッズたち、教科書に登場する歴史上の人物たちが食べていたといわれる料理を作ってみませんか? 料理を監修してくれるのは、食事復元研究の第一人者で御年91歳ながら現役で大活躍中の食文化研究家・永山久夫先生! 「でも、偉人たちが食べていたご飯では、今のボクたちの味の好みとは合わないかも・・・」そんな不安を解消してくれるのは、人気料理研究家のきじまりゅうたさん! 令和版にアレンジした栄養満点&映える『偉人メシ』に、ぜひ親子でチャレンジしてみよう! 今回は、弥生時代の謎多き女王・卑弥呼です。彼女はいったいどんなご飯を食べていたんだろう? ■卑弥呼って、どんな偉人? 弥生時代後期の倭(わ)の女王。2世紀後半に起きた倭国大乱(倭国で起こったとされる争乱)を、「鬼道(きどう)」と呼ばれるまじないを使って鎮め、国々を治めたといわれています。239年には中国の魏(ぎ)に使者を派遣し、日本の王を意味する「親魏倭王」の称号と金印、銅鏡100枚を与えられました。 ■卑弥呼も食した倭国の長寿食「生菜」 【材料】 アワビ(ホッキ貝):適量 タイ:適量 マグロ赤身:適量 しょうが・にんにくをすり潰したもの 赤味噌+醤油 【作り方】 (1)アワビ(ホッキ貝)、タイ、マグロ赤身を少し厚めの薄切りにする。 積み重ねるように盛り付け(山を3つ作る)、薬味野菜を添える。 (2)味噌と醤油を混ぜて添える。 ■古代から刺身を食べていた、「長寿の国」邪馬台国人と卑弥呼 日本の古代史の中で、極めて知名度の高い邪馬台国(やまたいこく)の女王・卑弥呼は、1800年ほど前に実在していた女性です。 中国の史書である『魏志倭人伝(ぎしわじんでん)』に記されている名前で、驚くことに邪馬台国は、世界でも珍しいほどの長寿国でした。 同書に「人々は長寿で百年、あるいは八、九十年まで生きる。国の大人(金持ち)はみな四、五婦、下戸もあるいは二、三婦」とあります。国の人々は長生きで、そのうえ一夫多妻(一人の男性が複数の女性と暮らすことを認めること)なのです。 何を食べたら長生きできて、多妻たちが欲求不満にならないような体力を維持することが可能なのでしょうか。それは、同書にも記されている「生菜(せいさい)」とみてよいでしょう。 同書には「倭の国(古代の日本)では、温暖で冬も夏も生菜を食す」と記されています。「菜」は野菜の意味もありますが、飯や酒の副食物のことも指します。「菜単(さいたん)」といえば中国料理の献立表のことです。 つまり、「生菜」とは生のおかずであり、主として魚などを生食することで、後世の刺身です。中国では、伝統的に魚の生食はしません。だからこそ倭の国の珍しい長寿食の風習として、『魏志倭人伝』に記録したのだと考えられます。 どのような魚が生食されていたかというと、タイやマグロ、ブリ、スズキ、カツオ、イワシなどで、現在とあまり変わりはありません。魚にはDHAやEPA、ビタミンやミネラルその他の若返り成分が豊富に含まれていて、卑弥呼や邪馬台国人の不老長寿に役立っていたのは間違いないでしょう。また、魚の長生き成分には加熱によって失われるものも多く、生食が理想的なのです。 主食は米飯で、野菜ももちろん食べていました。卑弥呼は西暦247年頃に90歳前後で他界、見事な長寿でした。 「歴史人」2022年3月号より 監修/永山久夫 ながやま ひさお/1932年福島県生まれ。食文化史研究家。古代から明治時代までの食事復元研究の第一人者。長寿食や健脳食の研究も行う。新聞や雑誌、テレビなどでも活躍中。 料理監修/きじまりゅうた きじま りゅうた/1981年東京都生まれ。料理研究家一家の三代目。男性のリアルな視点から家庭料理を提案している。NHK「きじまりゅうたの小腹すいてませんか?」を始め、 テレビや雑誌等を中心に活躍中。
永山久夫