【ライトノベル最新動向】『死亡遊戯で飯を食う。』「とある」「魔法科」「狼と香辛料」新刊も 9月の注目作を一挙紹介
9月のライトノベル新刊は、テレビアニメ化が遂に発表となった鵜飼有志によるシリーズ最新巻で、9月25日発売の『死亡遊戯で飯を食う。7』(MF文庫J)に注目が集まりそう。少女たちが賭け事にために命をかけたバトルを繰り広げるというデスゲームもの。全身を切り刻まれたり銃で撃たれたりといった殺伐とした描写が繰り広げられる展開を、テレビで見せて良いのか? といった声も出そうだが、原作を読んだ人ならご存じのように、ゲームに参加する少女たちは、特殊な加工が施されていて、吹き出る血がもこもことした綿のようなものに変わる。 【画像】美麗なイラストも目を引く『時々ボソッとロシア語でデレる隣のアーリャさん9 』 だから、アニメで観てもちょっぴり痛んだぬいぐるみにしか見えないはずだが、そこにいたる過程で繰り広げられる迫力のバトルも、裏切りのドラマもやはり心理的に響く。デスゲームの甘美さに絡め取られず正気を保てるかを試される作品でもある。そんなシリーズ最新巻では、主人公でゲームを99回生き延びることを目指している幽鬼が、より強くなるための訓練を終えて新たなゲームを次々にクリアしていく一方、日常生活の方でトラブルに巻き込まれる展開が描かれる。広がる世界観を楽しみたい。 アニメ化作品では、10月2日から第3期の放送が始まる予定の長月達平によるシリーズ最新巻『Re:ゼロから始める異世界生活39』(MF文庫J)も9月25日に発売。現在その第3期の1話目が90分のスペシャルエピソード『「Re:ゼロから始める異世界生活」3rd season 第1話「劇場型悪意」』として劇場で先行上映中。原作はここからずっと先の話になるが、振り返る意味でも観ておくとより楽しめそうだ。 長く続くシリーズでは、鎌池和馬『創約 とある魔術の禁書目録11』(電撃文庫)、佐島勤『魔法科高校の劣等生 夜の帳に闇は閃く2』(電撃文庫)、支倉凍砂『新説 狼と香辛料 狼と羊皮紙 XI』(電撃文庫)といった電撃文庫の人気シリーズ最新巻が9月10日にそろって登場。『とある』シリーズ最新巻では、冬休み最後の日に主人公の上条当麻が命を失い、そして目覚めた場所はこれまでにぶち壊してきた幻想の中で、そこでアンナ=キングスフォードからひとつの提案を受けるという。どこまでいっても当麻の不幸は続き、そして活躍も続く。 人気シリーズの最新刊では、9月14日発売の佐伯さん『お隣の天使様にいつの間にか駄目人間にされていた件10』(GA文庫)も関心を集めそう。隣の部屋に住む椎名真昼と恋人道になった藤宮周が、クリスマスに向けていろいろと画策するというストーリー。甘さいっぱいのラブコメを味わいながら制作中のTVアニメ第2期を待ちたい。 ラブコメでは、燦々SUNによる「ろしでれ」シリーズの最新刊『時々ボソッとロシア語でデレる隣のアーリャさん9 』(角川スニーカー文庫)が8月30日に発売。有希のことを実の妹とアーリャさんに打ち明けたことで、政近とアーリャさんとの関係に動きが出る。シリアスなラブの進展を見守ろう。 新作では、9月20日発売の逆巻蝸牛『女王陛下に婿入りしたカラス』(ファンタジア文庫)が軍事ではなく内政によって国を強くしていく主人公の活躍ぶりを楽しめる作品。家政学を専攻して敵対していた国を分析したリポートを書いたウイルに、その敵対国の女王が求婚を持ちかけてきた。弱点を知る者に改革を任せたいという意向だが、女王以外から敵と見なされる状況の中、ウイルは着々と改革を進めていく。知識は武器になると知ろう。 野中春樹による第18回小学館ライトノベル大賞優秀賞受賞作『嫉妬探偵の蛇谷さん』(ガガガ文庫)は、主人公の蛇谷カンナが園芸部に所属していて、美しい花よりも雑草を愛する性格で、口を開けば毒舌という癖ありまくりなキャラクター。「嫉妬」を行動原理にしていて、その感情を元に謎を解き明かすというから、どのような推理が繰り出されるのかが今から見物だ。9月18日発売。 ノベルズでは、9月10日発売のあわむら赤光『宰相の器を持つ小役人の、辺境のんびりスローライフ ~出世できず左遷されたはずが、なぜか周りから頼られまくっています~』(DREノベルス)が、まったりスローライフ系で読んで癒やしを得られそう。最年少で超難関試験を突破し官僚となりながらコネだと思われ地方に左遷されたゼン。本人は大喜びで田舎暮らしを楽しんでいたが、才能は隠せず皇女を助け田舎の役場の仕事を一瞬で片付けと大活躍する。誰からも求められる心地よさを味わえそうだ。 BPUG『逃亡賢者(候補)のぶらり旅 ~召喚されましたが、逃げ出して安寧の地探しを楽しみます~』(カドカワBOOKS)は、異世界に召喚されたものの、召喚者を不審に思ってその場から隠密スキルを使って逃げ出した2人組が、どうにかして王都を出て安住の地を目指すという、こちらもバトルから離れたストーリーが特徴。"異世界召喚あるある”を利用して生き延びようとする展開が、異世界召喚ものをもっと読んでおくのが吉と思わせる。9月10日発売。 西尾維新の「物語シリーズ」最新巻も。9月11日発売の『短物語』(講談社BOX)には初期33編の6つの書き下ろし新作を加えた39編を収録した短々編集。あらゆるキャラクターが登場しそうでファンなら嬉しい1冊だ。 ライト文芸系では、『老舗酒造のまかないさん』シリーズの谷崎泉による9月13日発売の新作『猫沢文具店の借りぐらし』(富士見L文庫)が、ふんわりと心温まる物語を読ませてくれそう。元編集者の猫沢二胡は夫を失い仕事もなくして、実家の文具店で店番をしながら暮らしていた。そこに大学生の甥が訪ねてきて、すこし変わった同居が始まるという展開の中、沈み欠けていた二胡の気持ちが上向いていく。元気をもらえそうな作品だ。 我鳥彩子『駒月小毬は困ってる 転生者問題対策室《天紋堂》の残業』(集英社オレンジ文庫)は、親から遠ざけられ受験にも就活にも失敗続きの駒月小毬の不幸の原因が異世界人のせいだと判明。アルバイトをしている和菓子屋の店主が異世界人対策をしていることも分かり、その手伝いを始めるという異色の展開で楽しませてくれそう。9月19日発売。
タニグチリウイチ