【フォーム徹底解析】ダルビッシュ有・パドレス「試行錯誤のトルネード投法」で日米通算200勝へ!
「最初は全部良かったですが、途中でちょっと自分の中で感覚がズレました」 6回途中まで5安打1失点7奪三振の好投をしながら、ベテランは自身の投球にシビアだった。 【連続写真】動作解析の専門家が解説…!ダルビッシュ有の「トルネード投法」 3月29日(日本時間)の本拠地ペトコパークでの開幕戦(対ジャイアンツ)に先発した、パドレスのダルビッシュ有(37)だ。日本人投手として最長の、メジャー13年目のシーズンを迎えた。本拠地開幕戦では白星こそ逃したが、日米通算196勝と200勝の大記録まであと4勝に迫っている(4月1日現在)。 「若い頃のダルビッシュは力任せの投球で、荒れ球が目立ちました。30代に入った頃からは試行錯誤し考えながら投げているのがうかがえます。ストイックに、合理的な投げ方を追求しているんです」 こう話すのは、動作解析の専門家で筑波大学・体育専門学群准教授の川村卓(たかし)氏である。ダルビッシュの投球を連続写真で見ながら、川村氏の解説を聞きたい。 「①で特徴的なのは左脚が二塁側へ向いていることです。(ドジャースなどで活躍した)野茂英雄さんのようなトルネード投法で、腰にひねりを生み出しています」 ダルビッシュのピッチングの合理性を象徴するのが②だという。 「トルネード投法のひねりにより、上半身が二塁側へ残っています。通常は左ヒジがもっと本塁側へ出ますが、ダルビッシュは顔の下付近にある。下半身にも同じことがいえるでしょう。右ヒザが股関節の内側に入ってもおかしくないところ、ダルビッシュの両脚はキレイな『ハ』の字に開いています。身体をひねることにより、全身の力が溜(た)められているんです。プレートについた右足が浮くことなく、しっかりマウンドを踏んでいるため合理的な動きが可能になっています」 ③から④にかけては、溜められた力がうまく活用されているのがわかる。 「ユニフォームのお腹に斜めにシワが入っていることから、腰を大きく回転させていることがわかります。胸を張って右腕を真上から振り下ろしている。体幹が横から縦へと回転し、腰→肩→腕→ボールと力がスムーズに伝わっています」 フィニッシュの⑤にも、ダルビッシュの凄味がうかがえる。 「メジャー投手の多くは力に頼るため、勢い余って体勢が一塁側へ崩れます。ダルビッシュは左足でしっかりマウンドを踏み、まったく崩れていない。フォームが安定している証拠でしょう」 ダルビッシュが「侍ジャパン」の後輩などに慕われるのも当然だという。 「天才と呼ばれる投手は才能と感覚で投げるため、自身の長所を言葉にするのが難しい。ダルビッシュは考えながらフォームを修正しています。現在に至るプロセスをわかりやすく説明できるので、若手の良いお手本になるのでしょう。常に進化を続けるダルビッシュなら、40歳になっても活躍できるはず。15勝以上をあげ最多勝を獲る可能性もあります」 自身を冷静に見つめる探求心で、ダルビッシュは37歳の今も成長している。 『FRIDAY』2024年4月19日号より
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