「僕も人間なので…」順天堂大オリンピアン三浦龍司の葛藤 悩む大黒柱の背中を押した“監督の言葉”で最後の箱根駅伝へ
その答えが知りたくて。新チームとなり三浦選手は、志願してキャプテンに就任。激闘から一夜明けた1月4日の朝に、順天堂大“伝統のエール”の声かけをする姿がありました。 新たな重責を担いながらも、3000m障害でこれまで以上の走りを披露。6月に行われた世界最高峰のリーグ戦で日本記録を更新して2位。8月の世界選手権では6位入賞を成し遂げます。 ところが世界で活躍する一方、練習のほとんどが仲間と別メニュー。海外遠征のためにチームを離れることも多く、キャプテンとして葛藤を抱えていました。 「自分が見ていないところでみんなはポイント練習をやっていて、そもそも声をかけられないし実態も見られない。キャプテンとして機能していない、正直何もできていない。ふわふわしているのは自分でも感じていましたが、どうすればいいのかっていう…」 悩みを抱えたまま迎えた駅伝シーズン。10月の出雲駅伝で出場はなく、チームは10位と苦戦。11月の全日本大学駅伝では、三浦選手が区間8位に終わり、チームも11位と4年ぶりにシード権を逃しました。 チームのために何もできずにいる。キャプテンとして無力感を味わう三浦選手に、長門監督は「みんなの気持ち、スイッチの入り方次第。そのスイッチを入れてあげるのがキャプテン」と言葉を送りました。
■仲間に伝えた思い オリンピアン×キャプテンとして挑む最後の箱根路
監督の言葉を受けて、11月の全日本大学駅伝の後に、チームメートへ思いを伝えます。 「出雲・全日本と僕自身すごく悔しかったし、まだまだこんなはずではない。みんなの力の高さは他の大学と比べても遜色ないものがあると思う。これだけの強さを持っていると証明していけるように、残りの1か月半やっていきましょう」 練習では先頭を走り、仲間とのコミュニケーションを大切にするなど、言葉だけでなく背中でもチームをけん引。三浦選手の姿勢によって徐々に仲間たちのスイッチも入っていきます。2年生の村尾雄己選手は、「チームで戦う意識が一気に固まっていった」、1年生の吉岡大翔選手は、「コミュニケーションが増えて、チームとしての雰囲気が良くなってきている」と仲間も証言。キャプテンの行動一つでチームは変われる、三浦選手にそう気がつかせた監督からの言葉でした。 キャプテン就任以降、三浦選手が書き留めてきたノートがあります。そこには、「みんなが持っている力を最大限ぶつけて満足できるようにしたい。そう思ってもらえるようにしたい」と仲間への思いがつづられていました。 重責を背負い、迎える最後の箱根路。三浦選手は、「達成感や充実感を全員で味わいたい。この1年の走りをぶつけて、区間賞を目指していきたいです」と決意。キャプテンの言葉に、もう迷いはありません。