AIが奪う仕事の1位がなぜ「水族館飼育員」? 水族館館長に聞いてみると
ソフトバンクグループの孫正義会長兼社長によると、AIは今後10年で人知を大きく超えてしまうという。で、心配なのは、どんな職業がAIに奪われてしまうのか、である。
〈知識の進化論:生成AIと2030年の生産性〉というレポートが掲載されたのは、野村総合研究所(以下野村総研)発行の「知的資産創造」1月号である。それによると、同社では、さまざまな職業を対象にAIがどんな影響を及ぼすのかシミュレーションしてみたとある。 結果は、生成AIの進化が「中程度」と「極めて高い場合」の2パターンが紹介されており、中程度では、474職種のうち最も影響を受けるのが「水族館飼育員」なのだという。AIに仕事を取って代わられやすいというわけだが、ちなみに2番目は貿易事務、その次はファンドマネージャー、国際公務員と続く。
外国語を用いる仕事は危うい?
野村総研に聞いてみると、シミュレーションは労働政策研究・研修機構が公開している職業データをもとに行っており、それらは読解力やプログラミングなど39のスキルから成っているのだという。 「その結果、水族館職員のスキルは、他の職業と比較した場合『外国語を読む』『外国語を聞く』『外国語を話す』などのスキルが全体の平均よりはるかに高いか、かなり高いという傾向がわかり、結論にまとめています」(広報課) うーん、分かるような分からないような……。外国語を用いる仕事は危ういということなのか。そこで現場の水族館職員に聞いてみた。
「養殖業は機械化されており、人手がかからない」
「飼育員に外国語が必要かどうかはさておいて、私は別の意味でAIに仕事が取って代わられる可能性があると思っています」 と言うのは、愛知県・竹島水族館の小林龍二館長だ。 「飼育員の大事な仕事のひとつに魚への餌やりがあります。でも、同じように魚を育てる養殖業では、とっくに機械化されており人手がかからなくなっている。一方で、お客さんに魚の生態を分かりやすく見せるのは人にしかできません。私はこの“見せる力”を磨くよう日頃から職員たちに話しています」 最後にチャットGPTにも聞いてみた。水族館飼育員の仕事はAIに奪われるの? 〈AIは水族館飼育員の仕事を変革する可能性がありますが、人間の専門知識と感性は依然重要です〉 今のところ失業させる気はないらしい。 「週刊新潮」2024年3月21日号 掲載
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