新幹線や電車の車体の形材加工30年…日立製作所笠戸事業所の松岡祝久さんが「現代の名工」に
厚生労働大臣が卓越した技能者をたたえる今年度の「現代の名工」に、山口県内からは下松市で鉄道車両を製造する日立製作所笠戸事業所の松岡祝久さん(54)が選ばれた。同事業所では1976年以降、17人目で5年ぶり。松岡さんは「鉄道車両はチームでつくるもの。これまで一緒に仕事をしてきた仲間たちのおかげ」と喜びをかみしめている。(河村輝樹) 【写真】西九州新幹線「かもめ」新車両、海を行く…製造工場の山口県から長崎県へ
松岡さんは約30年にわたり新幹線や電車の製造に携わり、車体の形材加工を担当してきた。
同社によると、受注生産の車両は顧客が求めるデザインも様々で、形材によって生産工程を切り替える必要がある。作業台に載せた形材を加工後、いったん別の場所に移し、用具を取り換えた後に別の加工を施すといった手間や時間がかかっていた。海外向けの受注も増え、生産工程の効率化が求められていた。
そこで松岡さんは、形材のアルミ合金を加工する際に用具を取り換えることなく多種の加工を可能にする補助装置を、現場の同僚とともに開発。生産工程の時間短縮を実現した。これにより生産能力も既存工場の2ラインで4ライン分に倍増した。
松岡さんは市出身。笠戸事業所で新幹線車両の内装を担当していた父親に憧れ、県立下松工高を卒業後に入社した。約200人の技能者を取りまとめる車体製作部門の作業主任を務め、後進の指導にも尽力。息子2人も同事業所に勤務している。
松岡さんは11日に東京で開かれた表彰式に出席。14日、取材に応じ「ものづくりに携わる自分たちにとって大変励みになった。これからも後輩や同僚が『現代の名工』に選ばれるよう、人材育成や技術の継承に努め、会社や仲間たちに恩返しをしたい」と語った。